北九州音楽祭の一環で行われたニコライ・アレクセーエフさん指揮のサンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団演奏会に行ってきました(於 アルモニーサンク北九州ソレイユホール)。
プログラムは、シベリウスのヴァイオリン協奏曲とラフマニノフの交響曲第2番というとても楽しみな2曲。
最初のシベリウスのヴァイオリン協奏曲は、人気ヴァイオリニストの一人でもある庄司紗矢香さんをソリストに迎えての演奏。
まずオケの団員が入場しましたが、その居並んだ皆さんの体格のいいこと。次に指揮者と共に庄司さんが登場。。。小さっ!笑
そして始まった第1楽章。導入部のpppから妙に違和感があるのでよくよく見たら、コントラバスが6本(注)のフル・サイズのオケ?!ヴァイオリン協奏曲には大き過ぎるのでは?との懸念も何のその。。。そのどっしりとした重量感を更に強調するような悠然としたテンポで歩みを進める指揮者とオケ。その上で温かい音色で表情たっぷりのソロを繰り広げるソリスト。
決して悪くはないものの、これまでこの曲に対して持っていた冷たい空気感、凛とした緊張感、その中での躍動感等のイメージとの違いが払拭出来ないまま、第1楽章が終わってしまいました。
ところが打って変わって第2楽章は、元々の曲想がこの方向性でも問題ないせいか、ゆったりとしたテンポの中、よく歌うソリストとじっくり厚みのあるオケが繰り広げる対話、温かい交流ぶりに心地好く浸ることが出来、続く第3楽章は逆にこの流れが長所に転じ、これまでに聴いたことのない迫力のフィナーレへ。力強く美しい音色で雄弁に語るソロと輝かしく強烈なfffを持つオケが分厚く押し切り、8割方埋まった多くのお客さんからも大きな拍手とブラヴォー!
庄司さんはその評判の高さから一度聴いてみたかったヴァイオリニストの一人でしたが、今回聴けて良かったです。腰の重いフル・サイズのオケを相手に全く臆することなく、表情豊かによく歌うヴァイオリンで対抗した庄司さん。演奏中それほど動くタイプではないせいか、逆に大きく動いた時に奏でられた情感のこもった音には感動させられました。
また、アンコールは庄司さんがヴァイオリンをギターのように抱えて、ピツィカートで全編演奏。シベリウスの水滴という曲で、最初から最後まで小さな音でしたが、最後の小さな小さな音まで聴かせた庄司さんはもはや大ベテランの風格。ステージ・マナーの落ち着きぶりといい、この先の更なるご活躍が本当に楽しみなヴァイオリニストだと思わされました。
次のラフマニノフの交響曲第2番は何とコントラバス8本(注)の巨大オケでの演奏!
悠々とした出だしのまま大きくテンポを揺らすこともなく、あっさりとした表情づけで進められた第1楽章でしたが、重低音に支えられた巨大オケの音の威力は強烈無比!分厚い響きがじわっと盛り上がるだけで鳥肌が立ったほどで、fffの後、静かにmpを奏でるオケの美しかったこと。
第2楽章も相変わらず小細工抜き、オケの威力で勝負といった感じでしたが、テンポを上げ盛り上がる巨大オケの迫力は圧倒的。広いダイナミック・レンジを活かした表現に音楽も熱を帯び、クライマックスの第3楽章へ。
この楽章が持つ映画音楽のような甘さには素っ気ないくらいの表情づけが丁度いいようで、強い力で心に訴えかける実に感動的な演奏。1stヴァイオリンと2ndヴァイオリンが向き合う対抗形の配置も音の掛け合いで効果を発揮し、深々と余力のあるオケがその最上の音を奏でじわじわと盛り上がる音楽、聴かせるヴァイオリンと木管ソロの掛け合い、緊迫感を持った美しい響き等々、この巨大オケの魅せつけた演奏に何度も鳥肌が立ちました。
最終楽章はその流れに乗った豪華絢爛でカッコいい響きにもう翻弄されっ放し。特にフィナーレにかけての凄まじいばかりの音響には、しばらくの間、金縛り状態で動けなくなったほど。最後の音が鳴り終えた瞬間、割れんばかりのお客さんの拍手とブラヴォー。堂々たる素晴らしい演奏でした。
アンコールは、チャイコフスキーのくるみ割り人形のトレパック。この巨大オケはやはり分厚い響きを奏でましたが、指揮者が最後のタクトを客席を振り向きながらお茶目に切って、満場笑い声と共に気持ち良く終了。
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