鈴木雅明さん指揮バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の演奏会で、バッハの最高傑作とも言われる「マタイ受難曲」を聴いてきました。
この日は同時間帯にジャズ歌手の大御所 中本マリさんと私の大好きなピアニスト吉岡秀晃さんのライブもあり、相当迷ったのですが、生で聴いたことがないどころか、これまでCDでもまともに聴き通せなかった約3時間の大曲が、生、しかも、鈴木=BCJという世界でも有数のコンビで聴ける、という体験(!)を選択したのでした。笑
さて、初めてのマタイ。。。キリストが弟子達に裏切られ、一人死んでいくまでの受難がオペラチックに感動的に描かれた作品ですが、期待以上に面白く得難い体験となりました。
まず、演奏編成がコロコロ変わることによる面白さ。指揮者の左右に通奏低音・コントラバス~ヴァイオリン・リコーダー+バス~ソプラノがそれぞれ一揃え配置されており、その2群に分けられたオーケストラと合唱が、左だけ、右だけ、全員、そして、歌手ソロ等、場面に合わせてコロコロ変わる編成とその劇的な効果が体感出来たのは、やはり生でこそ、でした。
そして独唱陣のレベルも高水準で揃っており良かったのですが、独唱者がソロのない部分では合唱団の一員をやる面白さ。ソロをやる時に前に出てきて、終わったら合唱団の中に戻って行く。。。演奏中にこんなに動きがあるのもまさにオペラ的。そして、これはCDでは絶対にわからないし、何より合唱団が上手いはず!笑
演奏全体としても、BCJがその道のソリストの集まりという面を持つせいか、ともかく上手かった!そのカッチリした精密感・生真面目さ・清潔さといった「日本的」とでもいう特性が、場面毎の変化の鮮やかさや研ぎ澄まされた緊張感に昇華した素晴らしい好演。特に初めて聴いた若松夏美さんのヴァイオリン・ソロは、メロディの歌いっぷりの良さがそのカッコいい演奏ぶりと相まって、実に素敵でした。(寺神戸亮さんの貫録のあるヴァイオリン・ソロもさすが!でしたが。)
また、この演奏会では対訳のコピーが全員に配布されるという周到さで、寝る人防止に大きく役立ったと思います。そして演奏中、ほぼ満席のホールにいる観客が多少ズレながらも一斉にページをめくるカサカサカサカサ。。。という音も斬新でした。笑
個人的には、その対訳コピーのお陰でストーリーと音楽の変化の関係を終始追うことが出来、非常に有意義だった半面、残念ながらその状態では演奏に浸り切ることが出来なかったのも事実で。。。「予習の深さで得られるものが変わる」のは何事でも同じだと再認識した次第。。。一方、以前の教訓(*)から今回やっておいた予習のお陰で、得ることが出来た感動があったのも事実で、「付け焼刃でも、やっておいて良かった!」と生々しく実感したことも付け加えておきます。笑
マタイ受難曲。確かに今回、すごく学べました。次の機会が楽しみです!
(*)遠い昔の話ですが、ゲルギエフ=ロッテルダム・フィルの来日公演にて、初めてプロコフィエフの交響曲第5番を聴いた時のこと。どうにかなるだろうとタカをくくって予習もせずに行ったら、全くどうにもならず、訳のわからないまま終わってしまった、という苦い教訓が。。。ただ逆に、その時の斬新な響きが耳に焼き付き、その後しっかり聴き込んで大好きな曲になったという、それはそれで贅沢な経験でもありましたが。苦笑
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