熊本・Jazz Inn おくらさんで行われた「ドラマー鐘ヶ江貴裕 壮行ライブ・Farewell Live by Epiphany Evolution」。。。熊本・八代ご出身のドラマー鐘ヶ江さんは、来月中旬に上京して一旗揚げようという、まさにこれから勝負をかけるチャレンジャー。
私が鐘ヶ江さんを知ったのは、先日八代で行われたMAY INOUE STEREO CHAMPのライブのアフター・セッションですが、井上銘さん(g)、渡辺翔太さん(key)や山本連さん(b)という手練れを相手に一歩も引かず、ガガン!と重量感のあるドラムで応戦した鐘ヶ江さん。
日本トップ級のミュージシャンに全力でぶち当たれる幸せを噛みしめながらも、容赦ない彼らからのプレッシャーになりふり構う余裕もなく必死に演奏されていたと思うのですが、その充実感いっぱいでどことなく愉しげな表情がとても眩しく、彼の成功を心から応援したいと思ってしまいました。
そこで、これからどんどん変わっていくであろう彼の原点を是非聴いておきたいと思い、この壮行ライブに行った次第です。
さて、ウェイン・ショーターのJUJUで始まったこのライブでしたが、張り詰めた緊張感にFarewell Live感満載!。。。等と思ったのは少し勘違い?
実は、今回のEpiphany Evolutionというカルテットは、このライブのためのスペシャル・バンド。ベーシストがバークリー音楽院に行って活動が休止していたEpiphanyというトリオから鐘ヶ江さんも飛び立つことになった今回、リーダーの堤智登さん(ts,ss)が藤井木ノ実さん(p)、ナナさん(b)に声を掛けて編成されたもの。更には曲も4人がそれぞれやりたい曲を持ち寄ったということで、セッション的な緊張感満載、が正しかったようです。笑
ただ、その緊張感がいい方に転んだようで、いいFarewell Liveでした。
中でも好きだったのは、後半2曲目ステファノ・ディ・バティスタのエルヴィンズ・ソング。
それまで抑え気味に進めていた鐘ヶ江さんでしたが、この曲では太くて重量感のあるドラム・ソロが炸裂。やっぱりこの響きは気持ちがいい。
その後、入ってきた堤さんの朗々としたサックスとのDUOが実にゴキゲンな響きを奏で、更には度胸満点のナナさんのベース、丹念に音を紡ぎ出す藤井さんのピアノが加わって出来上がったカルテットの音はとてもカッコ良かったです。
尚、個人的な話で恐縮ですが、今回のライブはたまたま重なっただけとは言え、今週4回目、かつ、三連荘だったので、さすがにアホやなぁと自嘲していました。
でも結果的には、巣立つ前の鐘ヶ江さんをちゃんと聴くことが出来、また休憩中にその意気込み等もお聞きすることが出来たので、無理して良かったと大満足。
仲間探しの大冒険という意味では漫画One Peaceを思わせる今回の鐘ヶ江さんの上京、レベルの高いミュージシャン達と切磋琢磨することでますます多くの引き出しを身につけていかれるのは間違いないと思いますが、その一方、大変なのは孤独との闘いだと思います。
孤独との闘い。。。私がこれまで間近に見た存在では、メキシコのルチャ・リ・ブレで武者修行していた日本人プロレスラーがまさにそうでした。最初は勝手もわからない、言葉もわからない、仲間もいない、いつになったら帰国出来るかもわからないのナイナイ尽くし。しかも、しょっぱい試合をしたら干される=プロレスラーとして生きていけない、金が無くなる、生活出来なくなるという恐怖の毎日。
でもそういう極限状態だからこそ鍛え上げられる動じない心身の強さというものがあり、言葉を覚え、仲間を作り、何をしたら客が喜ぶのかを研究し、自分の魅せ方・アピールの仕方を工夫し(注)、対戦相手にも花を持たせる術、試合を盛り上げる術等を体得することで唯一無二の存在に。。。そして遂に彼は、アレナ・メヒコという大会場のメイン・イベンターという地位まで昇り詰めました。
まぁ、鐘ヶ江さんの場合、故郷・熊本にはこうして送り出してくれる温かい仲間達がいるので、そこまで自分を追い詰める必要もないのですが。。。笑
いずれにせよ、凱旋ライブ、楽しみに待っていますので、心身共に体調にはくれぐれも気をつけて、頑張ってください!
(注)実際にこの日本人プロレスラー、現在プロレスリング・ノアで活躍中の大原はじめ選手が自分をどう魅せたのかを余談までに書き連ねておきます。
まず彼は観客との対話、対戦相手との対話に優れたプロレスラーですが、何がスゴいと言って、どうすれば自分の理想とするプロレスに近づけるのか?といつも真剣に考えていることでした。
そして具体的な話ですが、まず技の工夫。コーナーポストに振った相手へのフライング・エルボーというごく一般的な技が、大袈裟でユーモラスな前振りをつけることで、彼のオリジナル技に。「か~め~は~め~波~!」という掛け声と共にそのポーズをつけたのですが、ドラゴン・ボールの人気絶頂だった当時のメキシコでは観客に大受け。
その他、彼は入場した時から退場し終えるまで、観客の目がある内は大袈裟に表情や動作でアピールし続ける姿勢で臨んでいましたが、実はこれ、スペイン語でアピールしなければいけない場面を出来るだけ回避する目的も兼ねていたと聞いて、びっくり!弱みを如何にカバーするのかは常に大きな課題ですが、このアイデアには心底感心させられました。
また、コスチュームに至るまでありとあらゆる角度からオリジナリティを意識し、使えるものは何でも使うといった貪欲さも持っていましたが、その一番の傑作が「メイドさん」をマネージャーとして入場すること。日本=秋葉原=メイド喫茶というメキシコ人のイメージをそのまま体現することでこれも観客に大受け。
他にも多くいた日本人レスラーの誰も考えつかなかったアイデアを次々に打ち出し、実践していった大原選手、華麗な技という正攻法で大成功したウルティモ・ドラゴン選手以来の見事な一人勝ちでした。
ちなみにそのメイドさんは日本から来たラーメン屋の娘さんでしたが(笑)、これがまたなかなかの役者ぶり。メイドらしく可愛らしく入場し、試合中もリング下で大袈裟に一喜一憂している姿を魅せる等、試合に華を添えていました。
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