渡辺翔太さん(注)の初のリーダー・アルバムとなるAWARENESS。
新シリーズ「ジャズ・アルバム紹介」の初回としてこのアルバムを選んだ理由は、渡辺翔太さん(親しみを込めて、以下、翔太さんと呼ばせていただきます)が、今、まさに地元名古屋から全国区に羽ばたこうとノリにノッているジャズ・ピアニストであること、これに尽きます。
私達ファンにとって、下積み時代を知っているアーティストが全国区でブレイクしてくれる程、嬉しいものはなく、またこのアルバムを聴いて感じる眩いばかりの輝きは、もしかしたらこの時期特有のものではないかとも思うので、今の感想を残しておきたいと考えました。
軽やかながらも印象的な出だしで始まる1曲目North Birdは、このトリオがこのアルバムで志向しているのはフュージョン的なものではなく、あくまでジャズであることをきっぱりと宣言。そのきれいに流れる音楽の中でこの三人がそれぞれの力量の高さをさり気なく誇示。
一転して変則的なリズムで引っ掛かりを作りつつも、様々にうねった後、最後は大きく盛り上がる2曲目のAnts Love Juiceが終わった時にはこのトリオの世界に心躍らせられている自分に気づかされます。そして、ベースやドラムのソロもあってとても楽しい3曲目のArukuでメンバーの力量の確かさを魅せつけた後、このアルバムの一つの登頂点であり、吉田沙良さんの少し気怠いヴォーカルに惹き込まれるスロー・ナンバー4曲目のかなめへ。
5曲目アップ・テンポのSaga of Little Bearで少し色合いを変えて再スタートした後は、ラテン的な妖しい美しさを持つ6曲目Signで更に曲調を変え、7曲目のColor of Numbersという吉田さんが歌うお洒落なナンバーにつなげる構成は、作曲者である翔太さんの音楽の幅の広さを示すと共に、このバラエティに富んだアルバムの厚みそのもの。
そして最後の8曲目Goodbye and Helloはスローで落ち着いナンバーで楽しかったこのアルバムを心地良く〆。。。しかし、この曲にレコード的な小さなバチバチというノイズを入れるという遊び心には苦笑してしまいました。
それにしてもこの腕達者揃いのメンバーのアルバムは色んな聴き方が出来て、何度聴いても飽きません。
翔太さんのピアノはよくよく聴いていると素直に流れず、所々、え?という引っ掛かりを作ってあるし、時にそのお茶目ぶりに、そう来るんだ!と笑ってしまう時もあったりします。
ドラムの駿さんは先日福岡・直方のBoysのライブで初めて聴きましたが、多彩な音色・そしてその軽やかで切れ味のいい音とリズムはその時の印象と同じで、全曲ドラムだけを追って聴いてもかなり楽しめました。
ベースの若井俊也さんの演奏は以前、翔太さんと名古屋でやったライブや先日の鹿児島ジャズ・フェスティバル2018で聴かせていただきましたが、翔太さん、駿さんとの息がぴったし合っているだけでなく、時に煽っているのもわかったりして、面白い。
更にはこのアルバム、小さな音量で鳴らしてももちろん気持ち良く聴けますが、少し大きな音量で鳴らすとライブに行った時のようなグルーヴ感も味わえますので、是非一度お試しを。
尚、このデビュー・アルバムは、世間でも好評の内に受け入れられた模様で、Jazz Life誌18年6月号で上の取材記事が取り上げられ、8月号ではレコ発ライブのレポートも掲載されていました。
ということで、いいスタート・ダッシュを切った翔太さんが、次にどんなアルバムを世に問うのか。。。渡辺翔太としての真価が問われる2作目、楽しみに期待しています!
渡辺翔太トリオ AWARENESS
[メンバー] 渡辺翔太(P/Keys)、若井俊也(B)、石若駿(Ds)、吉田沙良(Vo) ※M4,7
[収録曲] 01.North Bird、02.Ants Love Juice、03.Aruku、04.かなめ、05. Saga of Little Bear、06. Sign、07. Color of Numbers、08. Goodbye and Hello
[発売日] 18/5/30
(注)渡辺翔太って、ジャニーズのタレント?
ネット検索するとそうなるんですよね。。。翔太さんは、今ブレイク中の新進気鋭の5人組MAY INOUE STEREO CHAMPの一員でもあり、先日、熊本・八代のレストランバーZさんで行われた彼らのライブを聴きに行ってきたのですが、その時にお聞きした話によると、翔太さんはこのアルバム発売を機に、それまでの表記「渡辺ショータ」を「渡辺翔太」にわざわざ改名されたとのこと。。。「ジャニーズJr.を意識しなかったの?」とお聞きしたところ、「改名してから気づいたんですよね」とあっけらかんとした答えが。。。笑
まぁ、翔太さんらしいというか、こうなったら、「渡辺翔太って、ジャズ・ピアニストだよね?」と当たり前のように言われるまで、頑張るしかありませんね。頑張って!
※今回の記事は下記関連記事を編集し直し、大幅に加筆したものです。
縁・サーフィン⑤「ジャズ・ピアニスト 渡辺翔太」(渡辺翔太のこれまで参加作品についても触れています)
MAY INOUE STEREO CHAMP@八代・レストランバ−Z18/08
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