岐阜城のある金華山の麓にある画廊「なうふ現代(注)」。。。その魅力は、個展が毎回趣向を凝らした素晴しいものであること、粋な親父が趣味でやっているといった風情やコーヒーが大変美味しいこと等々、語りたいことは色々ありますが、その紹介はまたの機会に譲るとして。。。今回は先日行ってきた石田智子さんの個展について。
これが今回のメイン作品です。
「静謐(せいひつ)な出会い」と題され、直径4メートル、高さ1メートルのすり鉢状のこの作品、何で出来ているかわかりますか?
何と、紙を縒って作る紙縒(こより)です。そして、その紙縒を十数本を一単位として焼き網みたいな感じでくっつけてあるだけで、あとはそれを骨組みの上に重ねるだけで出来上がっている作品なのです。
この作品を作られた石田さんは大量の紙縒を重ね合わせることで幻想的な世界を独自に切り開かれた方で、国内外で高く評価されておられる方だそうです。
そしてこれは、なうふさんでの前回の個展の際の作品。
上がその完成形ですが、この作品はその会期中に突然崩れたそうで、右下がその後のもの。。。作品としての構想は残れど、その構造からも個展が終わったらその作品自体は保存しようがなく、極めて繊細な作品としか言いようがありません。
しかも、崩れた後のその作品が作者の意図にはない美しさを持っていたとのこと。。。色々な芸術の中でも、美術品は形が残しやすいものであるという認識を私は持っていたのですが、このお話は非常に衝撃的でした。。。楽譜等、設計図になるものはあれど、その作品が毎回変わる演奏会のような一期一会の美術品もあるのですね。。。
そんなお話を伺ってから再度見るこの作品の実に美しくはかないこと。。。
ところでこの石田さん、臨済宗の僧侶であり芥川賞作家でもある玄侑 宗久(ゲンユウ ソウキュウ)氏の奥様であり、福島県三春町にご在住とのこと。。。
今回の震災では原発の被災地からその三春町に約2千人の方が避難されて来られ、夜中まで炊き出し等の支援で大変だったそうです。そして、今回の個展開催も危ぶまれたのですが、「あえてこの時期だから」とのご決断で開催を決定されたそうです。
「水の中の中をふるふるっと水面を出たときのような軽やかで静かな出会い。旧友との久しぶりの再会の喜び。そんな気持ちを伝えたくて作った作品ですが、今回の発表前に人類史上かつてなかったような大惨事が起こってしまいました。もしかしたらこの作品、きのこ雲に見えたでしょうか。今、この時のこの作品の意味を模索しています。」と今回お書きになられた石田さん。。。
そして、見る角度、ライティングにより受ける印象が全く違い、見る人のその時々の心境を反映する鏡のようなこの作品。。。
私には震災から少し時間が経過したこの時期だからこそ、「改めて自分を見つめ直しては?」という投げかけに思えました。
片付けられるその時、この作品は石田さんご自身の心にどう映ったのでしょうか。。。
尚、ご主人の玄侑氏が発起人の一人となり、子供達にOSL線量計(携帯用累積線量計)の配布すること等を目的にした「三春‘実生’プロジェクト」をご展開中だそうです。
もしよろしければ、こちらの三春‘実生’プロジェクトもご覧下さいませ。
問い合わせ:三春町役場内の事務局 0247-62-2111
(注)なうふ現代さんの雰囲気はこんな感じですが、いつ行っても温かく迎えていただき、感謝しております。
2011-08-21 17:17 初出
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