マーラー交響曲第9番

今回はマーラーの交響曲の中でも私の一番好きな第9番を取り上げます。

さて、前回ご紹介したマーラーの交響曲第2番が「負けないぞ!という意思」をわかりやすく語った曲というのならば、今回ご紹介する第9番は「『秘めたる想い』を時に激情を交えながら、時にユーモアを交えながら語る」とでもいった感じでしょうか。

まず、この曲の特徴、というか、マーラーの特徴と言っていいと思いますが、この曲も4楽章の合計が70数分とともかく長いです。そして、この曲を演奏会で取り上げるにはこの1曲だけということが多いのですが、逆に「演奏会としては短くなるので、損した気がするから行かない」と言った人もいました。。。苦笑

そしてこの曲は、多くの人にとっても特別な曲のようで、クラシックと呼ばれるジャンルの数多い作品の中でも飛び抜けた一曲と呼ばれています。

それでは、何がそんなにこの曲を特別な曲、飛び抜けた曲と言わせるのか。。。

技術的にも第1楽章が特に優れているという話もありますが、それを置いても、自分の想いをそのまま曲にするマーラーという大作曲家が、自分の死を強く意識した時に書いた作品だから、でしょうか。

そして、マーラーは次の10番を書いている最中に亡くなったので、いつもそうしていたような実演を聴いての手直しが出来なかったにせよ、彼が完成させた最後の作品であることも事実です。

また私自身、この曲は、ここ一番、何か想うところがあった時に無性に聴きたくなりますが、逆に、頻繁に聴きたいとは全く思いません。きっと同じようなことを思っている人も多いと思うのですが。。。笑

ということで、それらもひっくるめて、特別な曲、なのでしょう。

それでは、まずは30分ほど要する長大な1楽章。その出来栄えからも特に優れた曲だと言われていますが、マーラーが込めた感情の起伏が半端なく、感情移入の激しい演奏をのめり込んで聴くと本当に酔いそうになります。笑

ところどころに現れる心に沁み入るメロディの数々。。。特に弦とフルートの絡みなどは、本当に天国的なイメージと言っても過言ではありません。その終わりがまた実にやさしく、美しい。。。本当に名曲だと思いますが、この曲だけでかなりおなかがいっぱいになります。

2楽章は一転して、のんびりとしたまるっきり雰囲気の違う曲で、1楽章の緊迫感がスゴかっただけに、何だか間の抜けた感じがして呆気に取られるのですが(注)、途中からそのぼ~っとした感じが急に引き締められ、その内にこの曲の持つ重い雰囲気に飲み込まれていき、正直なところ、私としてはちょっと落ち着きます。笑

3楽章はその雰囲気を辛うじて保ったスピード感のある出だしで、どんどん進んでいきますが、その中盤で出てくる4楽章へのつなぎとなるそれこそ天国的な印象を受けるきれいなメロディとそのやさしさ!いい演奏なら鳥肌が立ったり、涙が出そうになること、必至です。

最後はスピード感を取り戻し、カッコ良く締めて、フィナーレへ。

そして最後に、また30分程度要する4楽章。でも、この曲の中で一番感情が込めやすく、一番馴染みやすいという言い方もあるのかもしれません。

ともかくきれいで、ずっと鳥肌が立ちそうなメロディが流れていきますが、そこに込められた想いは恐らく「まだ死にたくない。世界はこんなにも素敵なのだから。」

そして、それをそう取るかどうかは聴き手の自由ですが、よく解説書等にはよくそんなことが書いてあり、確かにそんな風に聴けば、そう聴こえると思います。笑

でも、その「秘めた想い」は、聴く人によって違ってもいいのではないでしょうか?

もう全てが終わってしまい、全てがきれいな思い出に変わって、あきらめられなかったところも結局仕方がないのか?といった感じで進んでいく最後の最後に、「でも。。。」と想いを残す感じ、そして、その先が絶望だとは思えないところがこの曲の最も素敵なところだと思います。

それでは、私が好きな演奏を2つ。

まずは、バルビローリ指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の伝説的な演奏。(もしその伝説にご興味があれば、ネットで検索すればすぐ見つかると思います)

この演奏が好きな理由は、ともかく弦がよく歌っていて感情的な演奏に聴こえるのに、メリハリが利いていて粘りすぎた感じがなく、自分のその時の気分によって、色んな受け止め方が出来るからです。

最近のラトル等の演奏は上手さが際立っていて、細部まで録音されているのですが、逆に分析的な聴き方を強いられているようで、簡単に言えば、酔えない。。。何でも適度が一番かと。。。苦笑

で、もう一つはその対極、山田一雄が新日本フィルハーモニー管弦楽団を指揮した演奏。

恐らく世界で一番感情移入した「酔える人には酔える、そう思えない人には耐えられない超ひどい」演奏。。。私はこの演奏が好きですが、でも、体調が悪いととても聴けません。。。笑

そして、あまりにも感情移入が激しく、遅く、粘った演奏となった結果、オケにとって相当演奏しにくかったのでしょうが、もしこれがベルリン・フィルだったら?と思ってみたりもします(苦笑)。。。でも、この録音は、日本の誇るべき山田一雄という大指揮者の残した貴重な宝物だと思いますので、ご興味があれば、是非、チャレンジしてみてください。

それでは最後にYoutubeから。

何とか頑張って、最後の大輪を咲かせてほしい小澤征爾ですが、彼が長年連れ添ったボストン交響楽団とのラストコンサートという特殊な状況で取り上げた演奏をどうぞ。

どう聴いても、感情移入度は低いですが、この曲の美しさは十分に味わえると思います。是非、聴いてみてくださいませ。

(注)2楽章について

この記事を書いた後、ちょっとした心境の変化がありました。実はこの間の抜けた感じというのは、異常な緊迫感の後だからこそ、大切なのかもしれません。

日常の中で、緊迫した空気の中でずっと過ごしていた中で、ふと頭の中をよぎったこの♪ドレミファソッソ、ドレミファソッソから始まるトボケたメロディ。。。すごく温かく感じられ、ちょっと肩の力を抜くキッカケになりました。

置かれた環境によって、音楽の捉え方が変わるのは知っていたことではありましたが、まさかこのメロディがあのキビしい状況の中であんな風に唐突に鳴るとは。。。無意識に私はこのメロディをそんな風に捉えていたということなのか、すごく不思議な、でも、ありがたい体験で、このメロディが好きになってしまいました。笑


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2012.9.8 20:39

汝が欲するがままをなせ

九州ジャズ・ロード巡りを中心に興味の赴くままジャズ・クラシック等について不定期に掲載。 タイトルはM・エンデ「はてしない物語」の含蓄に富んだ言葉で、サイト主の座右の銘。

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