【祝!55周年】福岡 北九州 小倉・Jazz Street 52 23/09

今年、55周年を迎えられた福岡・小倉にあるJazz Street 52さん。

これは、先日行われたその記念ライブ。

約300人の観客を集めて開催されましたが、私もちょっと遠出して、素敵な時間を過ごしてきました。



ライブの始めに少しされた渡辺香津美さんとマスターとの対談によれば、そのおつきあいはもう46年とのこと。

そのお言葉、ご紹介されたエピソード等から感じられるお二人の濃密な関係・時間。

本当に凄いマスター。


そのマスターも今年81歳。

最近、少し体調を崩しておられたこともあり、あまり無理していただきたくはないのですが。

でも、やっぱり、出来得る限り続けていただきたい。

心からそう願うお店。


「店に来る時は事前に電話を」

今回、マスターに帰り際にご挨拶した時、念押しされたお言葉。

いつ行ってもやっているのが当たり前だったので、事前に電話をしたことがないこのお店。

頻繁に訪問出来る場所にいない私としては、ちょっと辛いお言葉でした。。。


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~以下、22/5の記事【紹介:格別な店】福岡 北九州 小倉・Jazz Street 52 を転載~

北九州・小倉にあるJazz Street 52さん


中平穂積氏の新宿DIG直系、1968年のご開業。

50年以上、ただ黙々と誠実一途にやってきたマスター。

聴き応えのあるジャズとじっくりと相対峙出来る空間(注1)。

そのセット・リスト、熱いジャズの音が格別(注2)。

他では得難い時間が流れているお店。


マスターは、今年80歳(2022年時点)。

九州ジャズ四天王(他は有田平八郎氏/得丸泰蔵氏/中山信一郎氏)、最後の現役店。

そのご健勝を祈念する一方、出来得る限り通いたいお店であり、かけがえのないお店でもあります。


(注1)聴き応えのあるジャズ

その原点は、レコード一枚一枚に対するマスターの想いの強さ。

それは、ずっとリアルタイムで新譜として購入してこられたものだから。

(昔、レコードを買ったことがある方はおわかりになると思いますが、レコードは何度もしっかり聴き直し、解説も隅から隅まで記憶するくらい読んだものでした。)

このお店の棚に並んだ膨大なレコードは、その一枚一枚がそんな想いの積み重ね。

後年どう評価されるかどうかわからない発売当時に購入し、マスター・セレクトで残った名盤ばかり。


(注2-1)セット・リスト

半世紀以上、毎日欠かさずカウンターに立って、レコードに針を落とし続けてきた方ならでは、としか言い様がないのですが。。。

またミュージシャンの命日特集も、彼らの様々なアルバムが集中的に聴けるので、有難いです。


(注2-2)熱いジャズの音

JBL4311Bを中心としたシステム。

狭い店内の空間と見合った張り出しのいい中高音とバランスの取れた低音であり、大音量なのに何時間でも聴き続けられる音。


ちなみに、このお店の音響サポートは、同じ小倉にあるオーディオ・ビギンさん。その絶妙な音作りは流石の一言。


(注3)マスターについて

1. ちょっと誤解されやすい方。。。

ですが、幅広い年齢層、業界にまたがる常連さん達との温かい会話や転勤等で遠くへ離れてしまった元常連さん達と今だに続いているその交流ぶりを見れば、その人望の厚さは一目瞭然。

また、下記は一例ですが、ともかくお付き合いの長い方が多いのも、その特徴かもしれません。

・2018年の50周年記念ライブ:山下洋輔氏、日野皓正氏、渡辺香津美氏達の夢の共演も50年来の長いお付き合い/縁があってこそ

・学生時代、このお店でライブをしていた頃からの知り合いという辛島文雄氏との亡くなる直前までの温かい交流

・先に挙げたオーディオ・ビギンのオーナーも、彼が高校時代、客として訪問して以来のお付き合い 等々


2. マスター曰く「幸運と不運の混じった人生」

(1) 幸運:諸先輩/仲間/常連に恵まれたという人の縁

 ・恩人とも言うべき新宿DIG中平穂積氏

 ・九州ジャズ界を繁栄させた諸先輩:有田氏/得丸氏/中山氏

 (東京のミュージシャンが九州ツアーをする時、「北九州が入口であり出口だから」と、その世話役をされていたのだそうです。)

 ・50年超の老舗仲間:東京・ジニアスさん、一関・ベイシーさん

 ・開業前、親交を深めたDIGでの仲間達

 (これが後述するビル・エヴァンス初来日公演時にもつながる縁ですが、錚々たるメンバーです。)

 ・常連さん※1/このお店で出会って結婚され、今も通う常連ご夫婦 等々


※1:常連さん達と貸切バス2台で行った城島ジャズ・イン、定期的に開催していたゴルフ・コンペ等々、思い出話多数あり


(2)不運:2度も店に泥棒に入られ、貴重なレコードを盗まれたこと

 ・そんな経験から、一時期、「一見客不信」になられたとか。。。涙


(3)幸運+不運な逸話

 ・マスターはビル・エヴァンスの熱烈なファン※2ですが、その主役もビル・エヴァンス

 ・ビル・エヴァンスの初来日公演時、小倉から夜行列車で18時間かけて上京

 ・その公演の関係者がみんな昔ながらの仲間達だったお蔭で、楽屋&リハにも出入り

 ・来日3回目でビル・エヴァンスとの親交が更に深まり、プレゼントまでもらう仲に

 ・そこで、次回来日時のお店でのライブも約束

 ・が、何と、待望のそのライブ当日に台風が西日本を直撃!

 ・その日、大阪公演を終えたビル・エヴァンスは小倉へ移動中、広島で立ち往生。泣く泣く中止に。。。

 ・そして最大の不運は、その4回目がビル・エヴァンスの最後の来日になったこと

  (詳細は、ジャズ批評「定本ビル・エヴァンス」にて)


※2:マスターはビル・エヴァンスの熱烈なファン

 ・世の中がアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの初来日で沸き立ち、ファンキー・ブームの最盛期において、DIGでビル・エヴァンスをリクエストしていたという筋金入り

 ・店内には、一緒に写ったプライベート写真やサインが多数飾ってあります。

 ・先に挙げたアルバムExplorationsと下記ポスターですが、ビル・エヴァンスが書いたNaoki(マスターの名前)から始まるメッセージ。。。読めますでしょうか?


3. その他

(1) 歴史の当事者/証言者ならではの逸話が数々あり※3。

(2) 厚みのあるカッコいいコメント

 ・一流サックス奏者はマウス・ピースをセットして ブゥ~と吹いただけでジャズ

 ・命日特集をやるのは自分のため。例えば、マスターが20歳の時、23歳で逝去したブッカー・リトルの命日なら、他の巨人達のその年頃の演奏を思いながら聴く 等

(3)2017年に公開されたドキュメンタリー映画「抗い(アガライ)」の主人公、日本の負の歴史をペンで切り拓いてきた記録作家 故 林えいだい氏はご親族


※3:マスターの様々な逸話がお知りになりたい方は、田部俊彦氏(ts)のYoutube「紺屋町チャンネル」にマスターがゲスト出演した回をご覧ください。(下記リンクはその第1回分です。)



※このお店は弊著「九州ジャズ・ガイド 第③号( ↓ )」にも掲載されておりますので、よろしくお願いいたします。 

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汝が欲するがままをなせ

九州ジャズ・スポット巡りを中心に興味の赴くままジャズ・クラシック等について不定期に掲載。 タイトルはM・エンデ「はてしない物語」の含蓄に富んだ言葉で、サイト主の座右の銘。 ♪新しい秩序、様式が生まれる時代の幕開けです。この混沌を積極的に楽しんでいきましょう。危ぶむなかれ、行けばわかるさ、です。笑