直方谷尾美術館 第32回室内楽定期演奏会「クァルテット・エクセルシオ」シリーズ12


福岡・直方(ノオガタ)の直方谷尾美術館で行われた第32回室内楽定期演奏会「クァルテット・エクセルシオ(注1)シリーズ12」に行ってきました。

展示室に作られた簡単な舞台、周りにずらっと集まったお客さん100人強。

その温かい拍手で登場、クァルテット・エクセルシオ西野ゆかさん(1st Vn.)、山田百子さん(2nd Vn.)、 吉田有紀子さん(Vla.)、大友肇さん(Vc.)。

最初の曲はベートーヴェンの弦楽四重奏曲第6番でしたが、軽やかな第1楽章が始まった瞬間から圧倒的な彼らの世界。その表情豊かな個々の音と確かなアンサンブル、そしてコンサート・ホールとはまた違った直接音主体の力強くも温かい響きにすっかり魅了。緩やかな第2楽章では堂々と揺るぎないチェロ、細やかな表情をつける2ndヴァイオリンとヴィオラ、その上で美しく歌う1stヴァイオリン、更には主役が目まぐるしく変わっても優しい美音を奏で続ける彼らの演奏に思わず立つ鳥肌。

一転して躍動感の楽しい第3楽章ではアンサンブルの妙技に息を飲み、重々しい出だしから始まる最終第4楽章ではその明暗・緩急の表情転換の見事さに魅せられ続け、一気呵成の鮮やかなフィナーレを迎えても、感動ですぐには反応出来ず。。。一息置いてからの拍手、思わず、ブラヴォー!

生々しく実感出来た4人の息遣い、アイ・コンタクト、そして、弦楽四重奏団が一体となった時のスゴい音圧。。。これらは、サロン・コンサートならではの感動(注2)だとも思いましたが、実に素晴しい演奏で、この時点でもう大満足。笑

続くヤナーチェクの「クロイツェル・ソナタ」とスメタナの「わが生涯より」では演奏の前にヴィオラの吉田さんのサロン・コンサートならでは、実演付き、かつご本人のお人柄が反映された温かくもユーモラスな解説が入り、これもとても素敵でした。

「クロイツェル・ソナタ」ではベートーベンとは違い、まるで音劇でも見ているかのような演奏で、4人それぞれが弓を大きく使った強い表現力が圧巻。

また、最後の「わが生涯より」も情感豊かな演奏でしたが、白眉は何と言っても、亡くなった奥さんと出会った頃の喜びと哀悼を表現した第3楽章。心を込めてその気持ちを歌い上げる優れたプレイヤー達、思わず涙がこみ上げ、ただただ深く感動。。。

悲劇的な終曲まで聴き終え拍手をしながらも、そんなことを思い返していたら、何とアンコール。「この演奏会の主催団体『かんまーむじーく のおがた』の賛助会員で実行委員長が幼少の頃からお世話になったご婦人がお亡くなりになられたので、その追悼」という趣旨の前置きに続き、再度奏でられたこの第3楽章。

演奏者が心の込め方を変えられたせいでしょうか?それとも、単なるプラシーボ効果でしょうか?いずれにせよ、今度は本当に涙がこぼれてしまいました。

また、普段クラシックのコンサートに行く方ばかりではないと思われるお客さんにもかかわらず、演奏者が弓を降ろすまで、誰一人として拍手をされない。。。これもなかなかないことで、感動的だっただけでなく後味までいい演奏会となりました。

かんまーむじーく のおがた(注3)の皆さん、どうもお疲れ様でした。また、素晴らしいコンサートをありがとうございました。更には、本文中の当日の演奏風景の写真をご提供いただき、併せて感謝申し上げます。

最後に、このコンサートを教えていただいた福岡・黒崎のJazz Spot 風土の常連のピアニストNさん、この御礼はまたどこかで!


(注1)クァルテット・エクセルシオ:この素晴しい弦楽四重奏団を表す言葉としてよく書かれているのが「日本を代表するクァルテット」。。。今回初めて聴かせていただいて、思ったことですが、完璧なテクニックはもちろんですが、秘めたる強い情念、繊細で温かく思いやりに満ちた節度ある表現・解釈等は世界的に見た時、それ自体が飛び抜けたオリジナリティなのかもしれません。

感動醒めやらぬ中、この日演奏された曲を含んだCDを2種類共購入、サインまでしていただきましたが、他の曲の演奏もまた聴き所満載で、弦楽四重奏曲の中で私が一番好きなベートーベンの第14番が聴きたくなりました。満を持しての録音、期待しております!

(注2)サロン・コンサートならでは:「感動」ではないのですが、コンサート・ホールで味わえる静寂や緊迫感、立ち上る音の余韻はない代わりに、咳や飴等のセロファンの音がほとんど気にならないのはかなりの驚きでした。笑

(注3)かんまーむじーく のおがた:直方谷尾美術館でボランティアが主体となって室内演奏会を行われておられますが、世の中にはこうした試みを地道に継続している方々がいらっしゃるのだと改めて感心させられました。

汝が欲するがままをなせ

九州ジャズ・ロード巡りを中心に興味の赴くままジャズ・クラシック等について不定期に掲載。 タイトルはM・エンデ「はてしない物語」の含蓄に富んだ言葉で、サイト主の座右の銘。

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