大阪 新世界・hand-made JAZZ 澤野工房

先日「澤野工房物語」という本が発売(注1)されましたが、ちょうどこのタイミングで、 hand-made JAZZ  澤野工房さんを訪問してきました。

「澤野工房」は、その演奏内容・録音の良さで有名になった日本のジャズ・レーベルである一方、その本業は知る人ぞ知る大阪・新世界=通天閣の近くにある老舗の下駄屋さん。

その下駄屋さんの4代目でもあり、この本の著者でもある澤野由明社長は、「大阪にいた頃、このお店の常連だった」という北九州・メモリーカフェ・オンのNさんからそのお話を伺って以来、是非お会いしてみたかった方。

というのも、ジャズ好きの夢の一つはジャズ喫茶/バーのマスターになること (注2) ですが、究極の夢は自分のレーベルを持つことですので、それを見事に実現された澤野社長が一体どのような方なのか、とても興味があったからです。

通天閣から少し離れた所に車を停め、グーグル・マップに導かれるがまま通天閣に向かってアーケード街を進み、右側にある新世界市場入口の左にこのお店を発見!(上の写真左側)

「傘とお履物 さわの」という丸い看板、その下に「hand-made JAZZ 澤野工房」というアルバム・ロゴそのままの看板、その下は完全に履物屋さんというこのミスマッチ感いっぱいの光景に妙に感動。。。写真を撮って、一息置いて、少しドキドキしながら入店したところ、「いらっしゃい!新譜ですか?」と元気で温かい声(注3)。

そして、お店の奥にいらっしゃったのは、ネットの写真でお見かけしたとおりの澤野社長。。。少し緊張しながらご挨拶させていただき、早速最初に、お目当ての一つだった冒頭の「澤野工房物語」を購入。

その後、右奥にあるCD陳列棚の方に移動させていただいたのですが、パッと目に飛び込んで来たのが、この「1967」というアルバム。。。1967年に17歳でデビューしたピアニストのTõnu Naissoo(トヌー・ナイソー)さんの50周年記念作品で、1967年に由来した音楽を集めたアルバムだそうですが、試聴させていただいたところ、これが実にカッコいい!選ぶまでもなく、即買い。1枚目がすぐに決定。

それにしても、ここで聴かせていただく音が妙にいい。。。これは単にCDの音がいいからだけではなく、この陳列棚の上に置かれたラグビーボールのような独特な形をしたスピーカーECLIPSE TDシリーズのお手柄かと思ったので、「このスピーカー、初めて聴かせていただきましたがやっぱり音がいいんですね」と言ったところ、その答えには驚きました。

実はスピーカーだけでなく、そのこだわりの一環が、そこに置かれてある2台のCDプレイヤー 往年の銘機中の銘機マランツCD34。また、その間に挟まっている円錐形のインシュレーターを見て、妙に納得。

このプレイヤーを強烈に薦められたのは、オーディオ・マニアご用達の雑誌Analog誌にも取り上げられたことがあるという自作マニアのご友人だそうですが、その方のこの自費出版本にもびっくり!

更にお聞きすると、このECLIPSE TDシリーズは、その発売キャンペーンの時、澤野工房さんのCDを特典でつけられた縁でご購入されたとのことでしたが、それらをご説明される時の澤野社長の嬉しそうな笑顔。この方が相当なオーディオ・マニアであることをこの時点で強く確信した次第です(注4)。


そして、「そのスピーカーの脚が結構高くて予算からアシが出た」等という軽口も交えながら、次のCDの試聴に。。。澤野工房のベストセラー作品であることは知っていましたが、聴いたことのなかったアルバムということで、まずはVladimir Shafranov(ウラジミール・シャフラノフ) TrioのWhite Nights。

これは澤野工房が初めて自社録音したという記念碑的な作品で、録音に当たっての手配についてはシャフラノフさんご自身にも相当手伝ってもらったそうですが、親しみ易さと玄人好みの緊密な演奏が同居した素敵なアルバムだったので、これもまた即、購入決定。

そして、続いてGiovanni Mirabassi(ジョバンニ・ミラバッシ)さんのAVANTI!を聴かせていただきましたが、これまたとても心に響く演奏で、これまた即、購入決定。確かに、澤野工房最大のベストセラーであり、澤野社長にとって特別な作品とおっしゃるだけの魅力がありました。。。しかし、これはもう本当にキケンな行為!

「本当に申し訳ないけど、今日は同窓会があってもう行かないと」と澤野社長におっしゃっていただかなければ、試聴させていただいた端から全て購入してしまうところでした。笑

それにしても、実にツイていました。私が入店した時にまだ澤野社長がいらっしゃったのは、たまたま少し別の用事が出来たからで、まさにご出発直前だったとのこと。。。更には、そのご予定にもかかわらず、わざわざ私のために時間を割いていただいた訳で、本当にありがたかったです。

しかもお話を伺っていると、私の会社の元会長のご同級生とお聞きして、びっくり!しかも、2日前に飲んだばかりだとか。。。

30分強程度の短い時間でしたが、とても濃厚、かつ、色んな縁とツキを感じた訪問となり、感無量でした。

またじっくり伺う機会を作りますので、その節もよろしくお願いいたします。


(注1)澤野工房さんに行ってこの「澤野工房物語」を買うと、特典としてこのオシャレなジャケットの非売品・特別編集CD「ATELIER SAWANO 20TH ANNIVERSARY SELECTION」をつけていただけるとのこと。

内容はこれまで商品化されていなかった録音とのことですが、この楽しくも充実した演奏の数々は、さすが澤野工房!の一言。この裏サンプラーと言ってもいいCDをもらうためだけにこの本代をお支払いしてもいいぐらい。。。これがもらえたのも本当にツイていました。

尚、この特典がいつまで続くのか、確認し忘れました。ご興味のある方は大変申し訳ありませんが、お店にご確認くださいませ。

(注2)ジャズ喫茶/バーのマスターになるという夢。。。ただ実際には、それを叶えられたマスター達のご苦労を色々拝見するにつけ、「実現させない方が幸せな夢」だとも思っています。笑

(注3)後日、「澤野工房物語」を読んで正しく認識したこと、その1。

この日、別れ際に教えていただいたのですが、この声の主=とても明るく元気な店員さんは、実は澤野社長の弟さん。

録音現場の責任者を務められる等、この方のご活躍ぶりを正しく認識出来ていなかったのは完全に失敗で、今回レコーディングの裏話等を少し伺うことが出来たものの、もっと色んなお話も尋ねてみたかった。。。ということで、これも、再度訪問したい!と思った大きな要因です。

(注4)同 その2。

澤野社長のオーディオ・マニアぶりは、そのジャズ・マニアぶりととても高いレベルでバランスしていることがよくわかりました。それと共に、ご自身が聴いて納得出来ない演奏・録音はその看板にかけて世に出さない理由が、なにわ商人の鉄則だけでなく、ジャズ&オーディオ・マニアとしての矜持でもあったことが理解出来た次第です。


【18.11.8追記「澤野工房物語」の感想】

あっという間に読み終えたこの本ですが、「いい音でジャズが聴きたいという理想追求」「”売れる”より”自分が買いたい”を優先」「目先のお金より自分自身の納得=レーベルの信用が大切」という商品に対する信念や「成功するまでやめへんかったら、失敗せえへん」「回り道こそ一番の近道」という商売上の信念に感心し、「レーベルのプロデューサーはブレンダーに似ている」「自分の出来ないことは信頼出来る仲間に任せる」というお考えや決して順風満帆ではなかったこれまでの歴史、各アーティストの素顔を知ることが出来、本当に面白かったです。

でも一番面白かったのは、澤野社長が次にやりたいことにジャズ喫茶を挙げておられること。。。究極の夢を叶えられた方がまさか、そこに戻るとは。笑


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汝が欲するがままをなせ

九州ジャズ・スポット巡りを中心に興味の赴くままジャズ・クラシック等について不定期に掲載。 タイトルはM・エンデ「はてしない物語」の含蓄に富んだ言葉で、サイト主の座右の銘。 ♪新しい秩序、様式が生まれる時代の幕開けです。この混沌を積極的に楽しんでいきましょう。危ぶむなかれ、行けばわかるさ、です。笑