このタイトルを見て、何のことかピンと来た方は相当なオーディオ通!
ですが、わからなくて普通です。笑
juliaは、北九州・小倉のオーディオ・ビギンのオリジナル・スピーカー。
そんな juliaがこの10月、我が家にやって来たのです。(注1)
私はクラシック愛好家にして、約20年前からスターリングTWWを愛用してきたタンノイ党。
そして、この10数年間はジャズ・スポットを巡って、その音楽に魅せられてきたジャズ愛好家。
更には、オーディオ愛好家として、感性も磨いてきたつもりでしたが。。。
いやいや、あっさり、脱帽!
最初は、声や楽器の生々しさ、空気感、拡がり、音の切れ味の良さに酔い痴れ、
このサックスの艶っぽさ、このリズム隊の躍動感!これが聴きたかった!
等々、キミは初心者か?と自分にツッコミたくなるぐらい、単純にはしゃいでいたのですが。
その後、色々なアルバムを聴き直していると、うわっ、何?!
このピアノ、こんなに凄かった?このヴァイオリンって、こんなに美しかった?
この演奏って、こんなに良かった?この曲って、こんなにいい曲だった?
等々、これまでそのアルバムの本質を掴み損ねていたのかも?と冷や汗が出る機会が頻発。
その都度、そのアルバムに「ごめんなさい」と謝っている次第です。笑
「いいオーディオとは、音楽好きがオーディオのことを一切気にせず、純粋に音楽を楽しめる道具」とは、オーディオ・ビギンのオーナー 小山さんが、常日頃言っている台詞ですが、
オーディオに起因する余計なことを考えることもなく(注2)、何の過不足もなく、純粋にそのアルバムに刻み込まれた音楽に浸れるって、こんなに楽しく幸せなことなんだ!!
と、初めてその真意が理解出来ました。
あれもこれも聴き直したいアルバムだらけ。この年末休みも、手当たり次第にとっかえひっかえ聴き倒していますが、本当に素晴らしい時間を過ごしています。
この幸運な出会いと縁に心から感謝すると共に、「オーディオ・ビギン・シーズン2」に期待いたしております。
ということで、ここからは、導入経緯・事情やその想い、及び、マニアックなお話ですので、ご興味のない方は飛ばしていただいて結構です。
(注1)julia導入の経緯あれこれ:
1.スターリングTWWについて
私が愛用してきたスターリングTWWはクラシック愛好家ご用達、25cm同軸型2ウェイの逸品。その実力を十二分に発揮させたいとの想いからオーディオへの投資もどんどん加速。結構大変なことになったのも事実ですが、東京で購入して以来、約20年間、メキシコ~愛知~福岡~熊本~愛知と転々と転勤する私にずっと連れ添ってくれた相棒であり、クラシック音楽において、何度も心の底から感動させてくれた銘機。
2.ジャズへの想い
一方、ジャズを懸命に追いかけ始めるようになって、10数年。残念ながらジャズの再生においては、いいお店で聴くレベルには全く届かず※、お店で聴き惚れてつい購入したものの、単なるコレクションになるアルバムが多発。九州時代は「ジャズはお店で聴けばいい!」と割り切っていたものの、中津川に異動してからはその機会が激減。まともなジャズをもっと聴きたいという想いが募っていました。
※アルバムによっては、スターリングの奏でる上品な表現が心地良いものもありましたが、その心地良さがそのアルバムの本質ではないのも事実。
3.悪魔の誘惑?
ちょうど1年前の年末。オーディオ・ビギンを訪ねたところ、「誰か、この(展示・試聴機の)juliaを中古価格でいいから、買ってくれる人、いない?」と、オーナー。
これには困りました。。。
4.juliaの紹介と第一印象
juliaは、オーナーが惚れ込んだPA用38cmウーファーをベースに開発されたオーディオ・ビギンの主力機種。クラシック用、ジャズ用、ポピュラー用の3つの回路BOXを繋ぎ変えることで、それぞれの音楽が生き生きとした音に変わるという魔法のようなスピーカー。
でも私のお気に入りは、juliaの外側に置いてあるフラッグ・シップ機ROSEで、juliaは初めて聴いたその5年前以降、ほとんど聴いてきませんでした。というのも、その当時、ジャズは凄い!と感心したものの、クラシックの繊細な表現力、空気感においては、スターリングの方が上だと感じていたので。
5.ROSEの圧倒的な進化
ROSEはその当時からクラシックにおいてもかなり高い表現力を誇っておりましたが、好みの問題もあり、最初はずっとジャズを聴かせてもらっておりました。
でも、全てが変わったのが、コロナ禍自粛期間中。訪問する度に、ROSEでクラシックを聴かせられ、その都度、凄まじい進化ぶりに感心する回が何度か続き、ある日、私は遂に降参。
このROSEなら、買ってもいい!
6.コロナ禍自粛期間にオーディオ・ビギンで起きたこと
実は、コロナ禍自粛期間中、スピーカーの受注が全くストップ。オーナーは、次から次へと送られて来るオーディオ修理品と格闘※しながらも、それまでスピーカーの受注生産に追われ、やれなかった改善アイテムやアイデアを展示・試聴用ROSEに実施。そして、クラシック用の被験者の一人として選ばれたのが、ちょうどいい間隔で訪問する私。私の喜んだり、感心するポイントや感想等を参考にされては、延々改造されたそうで、最終的に凄いレベルに到達。
結果論ですが、コロナ禍自粛期間も悪いことばかりではなかった一例でもあります。
※オーディオ・ビギンは、器用なオーナーの噂が広がり、どこでもやってくれない修理を最後にお願いするお店としても有名なのです。笑
7.ここから始まった喜怒哀楽満載のドタバタ劇
ようやく、コロナ禍自粛が終息。juliaにもROSEの改善ポイントをフィードバック。
さぁ、これから、また売るぞ!とオーナーの意気が上がったところで悲報。
要となるPA用38cmウーファーが生産中止?!もう同じjuliaは作れない?
でも、受注が4セットも入ってしまった。どうする?!
窮地に追い込まれながらも、あれやこれや実験を繰り返され、新ユニット決定!
8.現行の展示・試聴用 juliaの売却へ
今回の実験中にも大きな発見があったし、これで何とかなりそう。
次は、(新ユニットで) julia2の展示・試聴機を製作せんといかんわなぁ。
そう言って、ホッと一息つかれたオーナー。
これが、上述「3.悪魔の誘惑?」につながる訳です。
9.困った私の胸の内
オーナーのコロナ禍自粛期間中の凄い進化、その後起きたドタバタ、喜怒哀楽劇をずっと見てきた私。
「やっぱり、うちの顔は julia」とおっしゃるオーナー。その初代 juliaの最後の1台。
しかも、その最終進化の被験者の一人は私。引き取り手として、この私以上の適任者がいようか?
でも、スターリングを越えていなければ、無理。
10.決断
意を決して、juliaでクラシックを聴かせてもらいました。
あっ?!
空気感、拡がりは、スケールの違いはあれど、降参したROSE直系。
楽器の生々しさも申し分なし。juliaももの凄い進化を遂げていたのでした。
その後、聴かせてもらったジャズ用、ポピュラー用の素晴らしさ、気持ち良さは想像どおり。
有難くいただきます。思わず、そう言っていました。
11.悩み
さて、そうなった時、私の大切なスターリングTWWをどうするのか?
別システムとして保持し続ける?場所もないけど、それ以上にもったいない。
スピーカーは鳴らしてあげてなんぼ、置いているだけなんて、一番可哀想。
12.名案
まず思い浮かんだのは、直方谷尾美術館室内楽演奏会を一緒にサポートしているメンバー。
中でも、一番信頼出来る感性の持ち主である高校の美術の先生。
打診してみると、有難いことに、引き取っていただけることになり、大団円。
13.納品
購入を決めてから10カ月。その間に受注していた4セットを製作・納品、私のjuliaの手直し・調整※をしていただいたようです。
そして、北九州・小倉からフェリーで大阪南港を経由、はるばる愛知までお越しいただき、納品・調整。尚、納品された製品が、すぐにお店より自宅の方がいい音で鳴るなんて、オーディオ界の常識ではあり得ませんので、ご注意を。
※被験者として観察してわかった私の趣味に合わせて、色々調整していただきました。
ちなみに、julia、ROSEは完全受注生産品。購入者の好みに合わせた製作(例えば、ビートルズが一番よく鳴るように、等)から、納品後の現地での最終微調整という手厚いサポートまで、オーナーの誠実な仕事ぶりを客の立場で感じ取ることが出来たのもいい経験でした。
14.後日談
この感謝、感激をどうやったら表せるだろう?と考えた末、こんな手書き表彰状を作成。
先日オーナーにお渡ししてきましたので、きっとどこかに飾ってあるはず。
オーディオ・ビギンをご訪問された方はご確認くださいませ。
(注2)オーディオに起因する余計なこと
スターリングTWWの奏でる音は、どう置いてもそれなりに良かったとは言うものの、実は空間とのマッチング、セッティング次第で大きく変わると教えてくれたのもこの銘機。
熊本で遭遇したコロナ禍自粛期間中、外出が基本的に禁止された2週間近くのGWがありましたが、ここで私がやったのが、オーディオのセッティングの大実験。存分に時間をかけ、やってみたかった配置転換や改良を全て検証・実施。
そのお陰で、スターリングTWWはあの熊本で奏でた音が最高だったといい思い出になっていますし、悔いがありません。
ただ、あそこまで追い込むのに、つぎ込んだ労力、時間、お金を考えると、もう出来ない。
更には、もっとこう鳴らない?もしかしたら、あれをやればもっと良くなるかも?等と考え始めると止めどなくなる恐るべきオーディオの深い沼。
残された時間が気になるようになった今、音楽だけに専念出来る幸せを有難いと思う次第です。
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