京都の街中の小さな劇場 Cafe Montage(カフェ・モンタージュ)さんは開業7年目になるクラシック喫茶にして、「室内楽ライブ」とでも呼びたくなる普段着で気軽に楽しめるクラシックの演奏会のあり方、更には知的好奇心も満たせるオシャレな室内楽演奏会を実践し、ご提案されておられる全国でも珍しいお店(注1)。
このお店のフロアで実力派の演奏家達の演奏会を行われるのですが、そのほぼ毎週土日+αという頻度の多さとこれまでなかった運営方法を始め、ともかく全てが斬新。
開演は20時で休憩なしの約1時間、料金は2千円、限定40席でインターネットを駆使した予約制。
そこで演奏される曲目を眺めていると、これまで聴いたことがなかっただけでなく、知らなかった作曲家の曲も多く、そのテーマ設定の面白さやポスターのデザインの美しさも秀逸の一言。
そんなこともあり、このお店の存在を知った昨年以来、この演奏会に行ってみたいとずっと考えていました。
そして、遂に訪問することが出来た今回のプログラムは、フルートとピアノのDUOで、オール「カール・ライネッケ」(注2)。。。この作曲家をご存知の方は相当なマニアさん、もしくは演奏家の方だと思います。笑
入口を入り、階段を下りたところに広がるフロア。その奥に立派なスタインウェイのグランド・ピアノ。
開演時間にはほぼお客さんが埋まっていたのですが、平均年齢が40歳ぐらいとクラシック演奏会としては若くて驚きました。
更に驚いたのは、その半数が女性であったこと。。。ここは大学の多い京都。音楽に携わる女性も多い、ということでしょうか。
演奏者が登場し、演奏会開始。意外にこの空間が響かず少し気になったものの、すぐに演奏者の熱演と曲の面白さに引き込まれ、全く気にならなくなりました。
また道行く車の音も何故かほとんど聴こえず、ライトの光は入るものの、逆に演出の一部かと思ったほど。
でもやっぱり、室内楽はこの距離で聴くととてもいい。。。演奏者の息遣い、緊張感、集中力等がリアルに伝わり、空気感を共有出来る幸せ。
素晴らしい演奏を称える熱のこもった拍手で演奏会は終わりましたが、その後のお店からのドリンク・サービスは嬉しいプレゼント。
何となく生まれるくつろいだ雰囲気の中、演奏者とお話される方やマスターにご挨拶されておられる方も含め、皆さん、楽しそう。
私も近くにいたお客さんとお話させていただきましたが、人気のある公演の場合は即売り切れになる時があるからHPのチェックが欠かせない、大阪からでも来る価値がある等々、皆さんがこの会を大切な日常の一部と捉えておられるようで、羨ましかったです。
こんな素敵な会をご主催されているこのお店のマスターですが、そのテーマ設定や曲のリクエストを演奏家にしたり受けたりされるぐらいなので、相当なレベルのマニアさん。
でも、実際にお会いすると人当たりが極めて柔らかく、チケット販売から照明、演奏前の作曲家解説からピアノの譜めくりまで、全てを手際良くこなされるとても若く見える44歳。
元々ピアノの調律や楽器修理をなさっておられたそうで、このお店のグランド・ピアノの調律もご自身でなさり、経費節減にも努めておられるとか。笑
京都・丸太町の住宅街のど真ん中にあるこのお店。。。今度は、英国タンノイの銘スピーカー をマッキントッシュのアンプで鳴らしておられるこのお店の通常営業時にも訪問してみたいと思いました。
(注1)福岡で私が応援しているかんまーむじーく のおがたさんの直方谷尾美術館室内楽定期演奏会も地元のお人形屋さんが一人でご主催されておられる珍しい取り組みですが、室内楽をこのように本来の姿に近い少人数で楽しめる草の根的な活動がもっと広まっていけばいいと思っています。
(注2)カール・ライネッケ(1824-1910)は、ブルックナーと同じ年生まれで、メンデルスゾーンやシューマンの弟子にして、ブルッフやグリーグ等の師匠という作曲家・教育家。
この日のプログラムは下記のとおりで全く聴いたことのない曲ばかりでしたが、フルートの瀬尾和紀さんとピアノの山田剛史さんのメリハリを効かせた表情豊かな演奏に、全く飽きることなく最後まで興味深く聴かせていただきました。
カール・ライネッケ
・フルートソナタ「ウンディーネ」
・組曲「ゆりかごから墓場まで」(E.ケーラー編)
・バラード
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