マックス・オーディオ 大原晴三社長18/08【九州ジャズもん列伝Vol.4】

第4回九州ジャズもん(注1)列伝は、北九州 小倉にある九州を代表するオーディオ店マックス・オーディオの大原晴三社長です。

マックス・オーディオさんはジャズ評論家の後藤先生のスゴいシステムを一緒に構築された老舗オーディオ店。

そんなスゴいお店の社長のお話等、お店の客でもないのに、どうやればお聞きすることが出来るのか?

多少の縁(注2)に最大級のツキと勢いを重ね合わせた成果としか言い様がなく、今更ながら大原社長の度量の広さに感謝している次第です。

マックス・オーディオさんには伺うのは初めてでしたが、その1階のオーディオ・フロアには高級オーディオがキラ星のように並んでおり、オーディオ・マニアの端くれたる私にとっては実に眩しかったです。

お取り次ぎいただき、運良く大原社長にご挨拶することが出来たのですが、ご丁寧に奥のショールームをご紹介いただいた後、2階にある音楽館Twilightというレストランで貴重なお時間をいただき、お話を伺いました。

今回、色々教えていただいた中でも一番勉強になったのは、「オーディオという再生芸術を考える上で、『録音』まで意識するかどうかで全然違う」ということでした。

大原社長は何でもいい音楽は聴くという雑食少年 (?)として育ち、アンプ製作に興味をお持ちになられたこと等からオーディオ店にご入社。

レコードまで製作されるその会社で大原社長は「録音技師」として抜擢され、そのご修業をされたのだそうです。

あのサントリー・ホールの天井に上がり、足が竦みながらもマイクを吊り下げられたお話から、朝比奈隆指揮大阪フィルハーモニー交響楽団のマーラー「復活」の録音現場で働かれたご経験やリハーサルでお客さんのいないホールに響くオーケストラのビロードのような響きの美しさまで、全く知らなかった裏方の世界のお話はとても面白く、興味深かったです。

また「録音技師」の集大成として、ご自身がチーフ・エンジニアとして録音された作品が「九州交響楽団のベートーベン『第九』」で、ジャケットにもちゃんとそのお名前がクレジットされているのだそうです。

今回色々な実例を挙げてご説明していただき、少しだけ理解出来たことは、「録音」とはミュージシャンの演奏だけでなく、マイクを始めとした録音機材の選択、そのセッティング、録音、イコライジング、ミキシング、トラック・ダウン等々、この一連の作業があって初めて生まれる複合芸術であること。

そして、ここで「録音」を徹底的に勉強出来たことが独立後にすごく活きたとのことです。

確かに考えてみれば、「お客さんの嗜好に合わせてオーディオ機器を選択し、その部屋に合わせて最適な形でセッティングする」というサービスにおいて、「録音」で学んだ知識・経験があれば、他の誰にも負けない音を提供出来るはずで、マックス・オーディオさんが大躍進を遂げられた秘訣の一端を見せていただいたような気がしました。

そして、このお話は私が敬愛している菅野沖彦先生にまでつながります。我々菅野先生のファンにとって、そのご自宅のオーディオ・ルームは伝説の「菅野トーン」が聴ける聖地ですが、大原社長はご修業中にご訪問されたとのこと。羨ましい!

ご感想は「イヤな音が全くしなかった稀有なシステムだった」とのことで、「録音技師としての菅野先生はハーモニー重視で奥行きのある音を録っておられたが、その感性が同じように反映されているように思う」とのご意見でした。

確かに、菅野先生がオーディオ機器を調整するとどんな機器でも最後は「菅野トーン」になってしまうという伝説的な逸話があり、それと併せて妙に納得してしまいました。

これまで数多くのライブ・イベントが行われたこの音楽館Twilight。

写真や動画を見せていただきましたが、ジャズだけでなく、クラシック(時にはオペラ風のイベントまで!)も取り上げられておられ、これまでに迎えられたミュージシャンの顔触れも錚々たるもの。

また、その音響、雰囲気共に実に素敵な空間で、これ程までライブを意識されるオーディオ店ともなれば、お客さんの信頼度が違うのももっともな話ですし、「(オーディオを極めるためには)オーディオ以外の芸術にも触れなければ駄目」とおっしゃられる大原社長ならではのことと感心するばかり。

また、この9/8(土)、9(日)に行われる鹿児島ジャズフェスティバル 2018の実行委員長 松本圭使さんも何度もここでライブをされたそうで、お聞きすると昔からのおつきあいなのだそうです。さすが、先見の明があるなぁ、の一言。

他にもオーディオ・マニア「小学校5年生」の話やオーディオにも機嫌が良い時と悪い時があるというお話等、面白いお話を色々教えていただきましたが、結局「オーディオ道」も最後は「人格」ということでしょうか?私も精進していきたいと思います。

お忙しい中にも関わらず、楽しくもためになる素晴らしいお話をたくさんお聞かせいただき、本当にありがとうございました。また勉強させていただきたく、機会を作って伺わせていただきますので、その節もよろしくお願いいたします。


(注1)くまもん、わさもん、若もん等、熊本では最後に「もん」をつけて、どんな人かを表します(くまもんは違う?笑)ので、ジャズに狂っている人、人生を捧げておられる人を「ジャズもん」と呼んでいます。

(注2)「多少の縁」と書きましたが、実際に大原社長ご夫妻との縁はごくごく薄いもので、先日たまたま、熊本・酔ingさんで行われたMAYUMI&E-Threeライブでご相席させていただき、その出演者でE.T.さん(Ds,藤山英一郎さん)も交えて少し談笑させていただいただけの話。

つまり、その後をつながなければ「ただの通りすがり」で終わるものでした。笑

ただ、北九州・若松のハンコックのマスターからマックス・オーディオさんのライブ・イベントが素晴しいというお話を教えていただき興味を持っていたこともあり、帰り際に「また機会を作って伺いますので、その節はまたよろしくお願いいたします」とご挨拶させていただきました。

とは言え、普通はこれも社交辞令で終わる話。。。ただ今回、恵まれた縁から後藤先生のオーディオ・ルームを訪問させていただくというツキと勢いもあり、図々しくも、そこからそのままマックス・オーディオさんに押し掛けた次第です。

きっと大原社長も「誰が来たんだ?」と驚かれたことと思いますが、本当に失礼な話で申し訳ありませんでした。

実は当日伺えるかどうかもわからなかったので事前連絡も出来ず、「今回はお会い出来なくても、ともかく一度お店に伺えば次回につながるから」と無心だったのですが、それもかえって良かったのかもしれません。

いずれにせよ、宝くじを買ったら、3億円当たっても不思議ではないぐらいツイている幸せな一日でした。笑


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汝が欲するがままをなせ

九州ジャズ・スポット巡りを中心に興味の赴くままジャズ・クラシック等について不定期に掲載。 タイトルはM・エンデ「はてしない物語」の含蓄に富んだ言葉で、サイト主の座右の銘。 ♪新しい秩序、様式が生まれる時代の幕開けです。この混沌を積極的に楽しんでいきましょう。危ぶむなかれ、行けばわかるさ、です。笑