佐賀・鳥栖の音楽小屋さんに行ってきました。
前回以降も原盤の見分け方等マニアックな世界を教えていただいたりしていたのですが、いつの頃からかライブの日と重なる等、妙にタイミングが合わなくなり、今回は久しぶりの訪問。。。ということで、また音楽談義が出来るのを楽しみにして伺ったのですが、思いもかけず衝撃的な体験をさせていただきました。
ちなみにこのマスター、強烈なオーディオ・マニアだと思われがちですが、前回も書きましたとおり、実はオーディオをいじるより音楽を聴く方がお好きな方です。ということで、この立派なオーディオ・システムも、この素晴らしいオーディオを鳴らす空間(小屋)も、全て自分の気に入った音楽をより良い状態で聴くため。
と、ここまでは前回わかったことですが、正直なところ、これまでレコードが原盤か否かをほとんど気にしたことがなく、何故マスターがあそこまで原盤にこだわっておられるのかについては、全く理解出来ておりませんでした。
そして、今回。ちょうどクラシックの何枚かを買い替えられたばかりで、その日本盤が処分されずに残っているという好機に恵まれ、遂にその聴き比べが実現!
聴き比べたのは、モーツァルトの交響曲第38番プラハのカール・ベーム=VPO盤と2台のピアノのための協奏曲のアシュケナージ&バレンボイム盤の2枚。どちらも写真右側の日本盤を先に聴かせていただいただいたのですが、「やっぱりここで聴くといい音ですねぇ」等と言って、素直に聴き入ってしまえるレベルの再生。
ところが!
原盤って、音の立ち方・輪郭・響き等々、こんなに違うんだ。。。「格が違う」とはまさにこのこと。
2枚共、曲が始まった瞬間から全く別物としか言い様がなく、茫然となるぐらいの衝撃。日本盤の音は何???こんなに音が違うとそのレコードに録音された音楽自体の評価も変わってしまいかねない。
マスターが原盤にこだわられるのは、ごもっとも!
原盤の価値を初めて理解出来た瞬間でした。
その後、マスターから「モノラル針を買ったんだけど、こっちも聴き比べてみる?」というありがたいお申し出に「お願いします!」と軽く二つ返事でお願いしたのですが、知らぬが仏とはよく言ったもの。
同じモノラル盤をこれまでのステレオ針とOrtofon SPU Mono Aという銘モノラル針とで聴き比べてみたのですが、やはり先に聴かせていただいただいたステレオ針でも「このレコード、いいですね!」等と言って聴き入ってしまえるレベルの再生。
ところが!!
モノラル針 Ortofon SPU Mono Aで再生した途端、音・響きの焦点がぴったり合致。。。「次元が違う」とはまさにこのこと。
曲が始まった瞬間から空気感も含め、あまりの違いにため息しか出ず、自失する程の衝撃。ステレオ針で聴いていた音は何???こんなに音が違うと。。。
それ以前に、同じ原盤でもモノラル盤はいいモノラル針を使って再生してあげないと、レコードが可哀想!もったいない!
ほとんど憤りに近い感情が込み上げてしまいました。
録音された演奏の情報を100%取り出すために、レコードの原盤にこだわり、針、プレイヤーにこだわる。。。前言を撤回いたします。音楽を聴くことがよりお好きなことに間違いはありませんが、マスターはやっばり強烈なオーディオ・マニアでした。笑
この後は、長時間聴いても聴き疲れしないというこのお店の特徴と優しいマスターに甘えてしまい、閉店後も延々と深夜まで、音楽と音楽談義を心ゆくまで楽しませていただきました。(注)
マスターだけでなく奥様も、遅くまでどうもありがとうございました。また伺いますので、よろしくお願いいたします。
【駐車場:有、喫煙:不可】
(注)せっかくですので少し長くなりますが、当日の「音楽と音楽談義」の一部もどうぞ!
その1.マスターの音楽遍歴と原盤に目覚めるまで
マスターがジャズの魅力に取りつかれたのは、18才の時に聴いたFMから流れていたバド・パウエルのクレオパトラの夢。
そこからずぶずぶとジャズにハマられ、今となってはレコードでしか聴きようのない巨人達の演奏も生でたくさん聴かれたそうです。
ただ、その後のフュージョンやウィントン・マルサリス等には全く好みが合わなかったそうで、聴くものが無くなったとジャズから少し疎遠になった時期があったそうです。
そして巡り合わせとは面白いもので、そんなタイミングで行かれたのが、NHK交響楽団の演奏会。
そこで聴かれたメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲とシベリウスの交響曲第2番でクラシックに開眼。
その後、長期研修で東京に行かれ、その当時ちょうどブームを迎えていたのが、マーラー。シノーポリ、ベルティーニ、インバル等、今となっては懐かしい巨匠達の演奏会をよく聴きに行かれ、マーラーにはかなりハマられたとのこと。
ちなみに、このお店の広い空間、大音量で聴かせていただいたこの「千人の交響曲」はかなり気持ち良かったです。笑
そして今から約30年前、マイルス・デイビスとミルト・ジャクソンの原盤との運命的な出会いがあり、その時にマスターはこう思われたそうです。
「本物のジャズを聴き直せる」
何ともカッコいい台詞ですが、こうしてジャズとクラシックの愛好家にして、原盤マニアが誕生。。。全ての所有レコードを最善の状態で聴くという途方もない夢に向け、30年もの長きにわたり歩み続けておられるお姿には、心から敬意を表します。
2.このお店が何故「小屋」なのか?
色んなことにこだわりを持つマスターは小屋マニア。。。これはマーラーの影響で「マーラーが夏休みにこもっていた作曲小屋に憧れられたから」だそうですが、ちょっとその興味の持ち方は普通ではないと思うのは私だけでしょうか?
ただ、「この小屋はちょっときれいに作り過ぎた」とボヤかれる辺りは、マスターらしくて面白かったです。
3.こだわりと言えば
最近、マスターがこだわっておられるのが、クロモジ。。。漢字で書くとそのまま黒文字だそうですが、皆さん、この木のことをご存知でしたか?
その枝が高級楊枝になる上、お茶にもなるこの木。。。今回そのクロモジ茶をいただきましたが、普通に美味しいハーブ・ティーで、一緒に出していただいた栗の煮物につけて出されたのがこの自家製楊枝。風流の一言ですが、結構マメな作業が必要なだけに、このマスターの旺盛な好奇心には呆れるばかり。
更には今、関心をお持ちなのが、ピザ釜。ただこれは良い釜を作るのは相当難しいらしく、悩んでおられました。ちなみに、良い釜でないと何が起きるのか?温度が400度まで上がらない釜だと時間がかかって、暑くて堪らないのだとか。
ということで、音楽以外のことも色々学ばせていただいております。笑
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