大野えり「eri ohno LIVE AT PIT INN」レコ発九州ツアー18/11【w/類家新平、石田衛、小牧良平 】

先日、「eri ohno LIVE AT PIT INN」というライブCD&DVDを発売された大野えりさん(vo)のレコ発九州ツアー(注1)10日間の内、3日目にしてこのカルテットでの演奏は初日となる熊本・レストランバーCIB(キーブ)さんと、最終日の福岡・大宰府のJazz Inn DOLPHY's(ドルフィーズ)さんの2回聴いてきましたが、本当に楽しくも充実した時間でした。

※「eri ohno LIVE AT PIT INN」のジャズ・アルバム紹介は後日掲載予定。

熊本のCIBさんはショー形式でゆったり鑑賞出来るきれいなハコ(会場)。

その満席のお客さんの前に初めに立ったメンバーは、類家心平さん(tp)、石田衛さん(p)、小牧良平さん(b)の3人ですが、インストの序奏だけで一気に会場を非日常の世界へ誘ったことからもそれぞれの力量の高さは明らか。

期待が高まったところで、袖の下に布のついたドレスでゆるやかに登場された大野さんでしたが、その後は大野えりワールド全開。

満面の笑みからしかめっ面までその豊かな表情、その曲に合った音楽的な身のこなし、時にマイクを外して歌ったり、縦横無人なスキャットを駆使して、時に類家さんのトランペットのミュート・プレイと絡んでとても楽器的なヴォーカルを魅せたり、客席を完全に手玉に取る等、もうその存在感は圧倒的。

初めて大野さんを聴いた私にとって実に衝撃的なライブ体験で、「もっと距離の近い小さな箱で聴いてみたい!」と、日曜夜・福岡という体力的に少しキビしいドルフィーズさんへの参戦を即決したほど。

そして、この日購入したCDとDVDでバッチリ復習&予習を済ませて臨んだツアー最終日のドルフィーズさんでしたが、これが最高の一夜!

セット・リストはCIBさんの時と全く同じで、1曲目はJust In Time(注2)。

類家さん、石田さん、小牧さんがインストの序奏で満席のお客さんの心をさっと掴んだところまでは同じでしたが、その流れで登場された大野さんが前回とは違って、至ってカジュアルな雰囲気。

その距離の近さもあって、手を客席の方に伸ばして歌う大野さんの訴えかける力の強さ、類家さんのトランペットの音をこの距離で浴びる快感等、迫力満点。

そして、小牧さんの鳴りの良いベースに絡む石田さんの柔らかいピアノの音、その息の合ったDUOの気持ち良さ。全員、最初からエンジン全開。これがツアー最終日のノリというものでしょうか?

2曲目のThrow it Awayでは、しゃべるように歌うヴォーカル、しゃべるように囁くトランペットに驚嘆させられ、CDではヴォーカルとフルートとのDUOが聴きものの3曲目Confirmationでは、何とトランペットとのDUO!途中で英語の歌詞なのかスキャットなのかわからないくらいノリに乗ったヴォーカルと腹に応えるミュート・プレイのトランペット。この2人の掛け合いがこんなに聴けるのもライブならではの贅沢さ、たまりませんでした。

4曲目は大野さんが歌詞を書き換えたとおっしゃるLotus Blossom(蓮の花)。今年、地震や台風で被災された多くの方が蓮のように泥の中から太陽に向かって咲いてほしいとの想いを込められた美しい曲ですが、柔らかい音のベース・ソロからのトランペットのミュート・プレイの響き、ヴォーカルのマイクを離して歌われた声が沁みたこと。

5曲目のThe Best Is Yet To Comeは、上がったり下がったりする印象的な波型音型が全編で奏でられていて面白いのですが、実はこの音型、CDではベースの米木康志さんがご担当されているパート。。。米木さんのベースの温かみのある表現に対し、石田さんのピアノではキラキラと跳ねるような表現でどちらも面白かったのですが、そこに小牧さんの豊かな音のベースが楽しそうに絡んできて、ここでもライブならではの楽しみを味合わせていただきました。

6曲目の La La La You Are Mineは大野さんの自称「珠玉の作品」ですが、ヴォーカルに寄り添うトランペット、ピアノとベースの掛け合い等の妙技を魅せた後は、客席にメロディーを♪ラ、ラ、ラ~と切って歌わせ、そこにスキャットで乗っかってくる大野さん。大野さんと一緒に音楽している気になれるこのお遊びは、何度やっても楽しい!

尚、この曲はDVDの最終曲として収録されているのですが、PITT INNでは録音優先・曲の完成度優先のため、お客さんに歌ってもらう練習を十分にはやりようがなかった模様。よって、この1曲に関しては間違いなくライブの方が楽しかったと思います。笑

ということで、あっという間に、1stステージ終了。

休憩の後、始まった2ndステージの1曲目は、クラゲが大好きで何時間見ていても飽きないとおっしゃる大野さんが作られたJelly Fish Blues(クラゲ・ブルース)。

ゆるやかな波を思わせる序奏から始まるムードたっぷりのこの曲は、手をクラゲの触手のように時々ふわっと浮かせる大野さんの振り付けがとても印象的(注3)。袖のあるドレスでやられたCIBさんでは広がる触手がとてもきれいでしたが、色んな種類のクラゲが見ることが出来て面白かったです。笑

楽器全員がテンポの違うように聴こえる演奏でよくヴォーカルが歌えるものだと感心した2曲目This Can’t Be Loveの後の3曲目In Time Of The Silver Rainはこの日の一つの頂点。

トランペットとベースのソロが素晴らしかった上、押したり抜いたり跳ねたり叫んだりと変幻自在のヴォーカルが楽器のような強い音圧を魅せつけ、遂にはヴォーカルとトランペットの2ホーン・カルテットの曲みたいに。。。これぞ、ジャズ。痺れました。

そして次の4曲目のLush Lifeがもう一つの頂点。実はこの曲、このお店ドルフィーズのマスターに勧められて取り組まれた作品なのだとか。また、落ちぶれていく我が身を歌った歌詞にどうしても違和感のあった大野さん、その歌詞のI(俺)を He(彼)に替え、彼の物語とすることで自然に歌えるようになったのだそうです。

まるでミュージカルのように身振り手振りをつけて歌うヴォーカル、寄り添うように美しい響きで伴奏するピアノとベース、むせび泣くようなトランペット等々、その多彩な表現にすっかり魅了されましたが、白眉は最後にヴォーカルとトランペットが響かせた絶妙なppp。この小さいハコだからこそ伝わったわずかな空気の振動ですが、まさに鳥肌もの。この2連打で見事にノックアウトされました。

パンチのある5曲目Sharing The Night With The Bluesの後はこのステージ最後の曲、デューク・エリントンが締めの曲として演奏していたという軽快なLove You Madly。満席のお客さんがそれぞれリズムを取る足踏みの音が妙に大きくて笑ってしまいましたが、これも全員が心から楽しんでいた証拠。アンコールの明るく楽しいFeeling Goodで全て終了。

これぞまさしくジャズ!どなたかがおっしゃっておられた「ヴォーカルが最強の楽器」説にも納得。お腹いっぱい、ともかくジャズを堪能。

それにしても、やっぱりレコ発ライブは発売されたアルバムを予習してから聴くと更に楽しい。これは熊本・八代で聴いたMAY INOUE STEREO CHAMPの時にも思ったことでしたが、今回はその編成の違い等(注4)による楽しみが抜群でした。

トランペット、サックス、フルートという豪華絢爛なフロント陣と強力なリズム・セクションとの演奏がとても魅力的なCDに対し、ドラムレス・カルテットで、フロントがトランペット1本のみの今回のライブ。

一見さびしそうに思えますが、その編成のお陰でミュージシャン全員の自由度が高くなり、CDとは全然違うジャズ的展開満載、聴き応え十分の素晴らしい演奏になったりするので、本当にジャズは奥が深い。

その他にも「ライブは満員のお客さんで埋まった小さなハコに限る」、「ツアーを複数回聴く楽しみは格別」、「ツアーは最終日に限る」という誰かが言ってそうなジャズ格言(?)を考えながら、熊本への帰路についた次第です。

(注1)大野さんはあの新宿・PIT INNさんで初めて演奏したヴォーカリストで、デビュー40周年を来年に控えた今年、そのPIT INNさんで初のライヴ・レコーディングに挑戦されたのだそうです。

そして2日間4ステージを全て録った結果、その全15曲にO.K.テイクがあったため、CDを2枚に分けることにされたのだとか。。。来年5月に発売される予定のVol.2とそのレコ発ライブが今から楽しみです!(今回もらいそびれた石田さんのサインもその時にお願いする予定。笑)

ちなみに、そのプロモーションがYoutubeにアップされておりましたので、ご覧ください。

(注2)このJust In Timeは今回のCDにもDVDにも収録されていなかったので、来年のVol.2待ちですが、早くもう一度聴きたい一曲です。

(注3)Jelly Fish Bluesの手をクラゲの触手のように時々ふわっと浮かせる振り付けは、DVDの1曲目でご覧いただけますので、ご参考まで。

(注4)編成の違い以外で面白かったのはメンバーの違いだったのですが、それはジャズの要であるベーシスト。CDでは日本指折りのベーシスト 米木さんですが、今回は小牧良平さん。大野さんから「九州の生んだ期待の若手ホープ」と紹介されたのもダテではない実力の持ち主で、その米木さんが「彼の運指は勉強になった」とおっしゃったほどです。(注5)

小牧さんは、東京でもよく大野さん達と演奏されておられるとのことでしたが、ツアー最終日ともなると所々、これまでやらなかったようなアドリブもやられ、時々、類家さんがおっ?という表情を見せられたりして面白かったですし、石田さんとの丁々発止のやり取りもライブならではの魅力満載でした。

ということで、今後が楽しみなベーシストをまた一人見つけてしまいました。

(注5)米木さんが「小牧さんの運指が勉強になった」とおっしゃったのはこの翌日、熊本・おくらさんで行われた大口順一郎さんとのDUOを聴きに行った時のことです。また、今回の大野さんのアルバムを持って行き、米木さんにサインしていただいたのは言うまでもありません。笑


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九州ジャズ・ロード巡りを中心に興味の赴くままジャズ・クラシック等について不定期に掲載。 タイトルはM・エンデ「はてしない物語」の含蓄に富んだ言葉で、サイト主の座右の銘。

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