【番外編】大阪・京橋 喫茶洋酒の店 NONSY!(ノンシー)

オーディオ道を邁進中の知人が、私に勧められて行ってきた大阪・京橋のノンシーさん



マスターに、色んなレコードを聴かせていただいた上、懇切丁寧に教えていただいたものの、情報量が多過ぎて、最後には頭から煙が出たとのこと。。。


必死に書き留めたというメモから読み解くに、マスターが伝えたかったこの日のテーマはこれ。

「オーディオでやるべきことは、録音された音楽をそのまま再生すること」



オーディオは絶対に自分の好きな音にしたらあかん!

調味料でホンマの味をわからんようにして、どないするんや!

何度、こんなセリフをマスターから聞いたことか。


でも、わかったような気になっては、

まだわかってへんなぁ。ちゃんと物理の勉強せな、あかんで!

と、その都度、マスターに諭される私も修業中の身。



とは言え、この知人には訪問を勧めた責任もあり、今の私の理解でとりあえず説明。


これがかなりの力作になったので、今の私の記録としてここに残しておくことにしました。

ついでに、どなたかの、何かのお役に立てば何よりですが、さて。



1.序章

「オーディオでやるべきことは、録音された音楽をそのまま再生すること」

これはとても奥が深い言葉。

ここではオーディオとレコード※について、私の理解で説明しますが、今度行った時、マスターに違う!と言われたら、また教えてください。


※ここでは、「録音された音楽」の様々な媒体~アナログ・レコード、CD、DVD、Blu-ray Disc、ハイレゾ等々~を「レコード」と総称



2.オーディオ

(1) オーディオで一番大切なのは、鳴らす部屋

① 留意すべきポイント

a. 大音量が鳴らせて、かつ、外の騒音も聞こえない環境:音を鳴らさないと全く何の音も聞こえないぐらいシーンとするぐらいがベスト。

b. 残響の処理:録音された音楽に入っていない余計な残響はいらない。ジャズはそれぞれの楽器がちゃんと聴こえないとダメ。特にベースが聴こえないと、ジャズは理解出来ない。普通の部屋だと必ず残響が付随して、その邪魔をする。



c. 定在波の処理:音は波。その波は消えるまで部屋の壁で反射し続ける。部屋の隅とか1/4辺りで音圧が上がる所があったら、そこがぶつかる所。音は濁るし、次の音の進行を妨げるので、排除しないとダメ。

d. きれいな電源の確保:マイ電柱が理想。同じオーディオでも日中の汚れた電源で聴く音と夜中の比較的きれいな電源で聴く音の違いは一聴瞭然。ちなみに、オーディオ評論家の故 高城重躬さんのお言葉ですが、オーディオを突き詰めると、マイ・ダムが欲しくなるらしいです。



② それらへの対策方法

a. b. c. オーディオより先に、部屋の整備にお金をかけること。吸音・遮音のための壁・天井・床の材質・分厚さ、二重扉・窓など。既に存在している部屋への最低限の対策なら、四角柱の吸音タワーが有効。出来れば、天井の壁との境全てに貼り巡らせたい。それが無理なら、せめて部屋の四隅の床から天井まで立てる。更に出来れば、定在波の溜まる所にも同じように出来ると良い。

d. マイ電柱が無理なら、電柱の真ん前にある一軒家を狙いましょう。



(2) オーディオ選びで大切なことは、鳴らす部屋とオーディオの関係を考えること

① 鳴らす空間の広さに見合ったオーディオを選ぶこと。

② 一つの基準は、そのシステムの組み合わせで、アンプの一番いい音を引き出せるか否か。

③ アンプの一番いい音とは、プリ・アンプ、パワー・アンプのボリュームが共に12時の位置。そこまで上げれないのであれば、スピーカーの大きさ・能率、アンプのスペックなど、何かを見直すべき。



(3) オーディオのセッティングは必ずCDで行うこと

① CDプレイヤーはある一定水準の癖のない音を鳴らしやすいから。逆にレコード・プレイヤーを使わない方がいい理由は、後述(5)のとおり。

② 目指すべきは、スピーカーの存在が消える状態。

③ 音楽の一部が特に強調されてはいけない。全体のバランスが大切。いい音は静かで澄んでいる。



④ いいライブをたくさん聴いて、耳と感性を鍛えること。実際に鳴っているいい音を知らないと、そのイメージがないと、音楽を素直に再生出来ない。

⑤ 一方、原理原則を学ぶことが大切。それを感覚だけでやる人は、物理的な理論の裏づけがないから終わりがなくなる。いつまでもイジって、どんどんおかしな音にしていくのがオチ。尚、やっている本人は客観的に聴けなくなっているのが、怖いところ。



(4) CDの正しい再生方法

① CDは音楽の録音媒体として十分な情報量を持っているが、CDプレイヤーではその情報量の数10%しか引き出せないのが現状。

② それは、昔、PCにCD-ROMからプログラムを読み込んでいた時のことを思い出せば、よくわかるはず。

③ 100%エラーがない状態まで何度も同じ所をトレースしないと読み込めないのがCDという媒体だとわかれば、CDプレイヤーがずっと途切れずに音を鳴らし続けている方が不思議。あの高速回転中に一度しか同じ所をトレース出来ない状況で、正しく読み取れず抜け落ちた音楽情報をどのようにしてごまかしているのか、恐ろしいぐらい。



④ CDプレイヤーでも機種によってピンキリで音は全く違うが、いずれにせよ、CDの100%の情報を引き出すことは困難。

⑤ よって、CDの情報を100%引き出すためには、リッピングして、PCで再生するのが一番。詳しくは、マスターが書き記されたこちらをご参照ください。



(5) レコードの正しい再生方法

① まず認識すべきは、レコードを正しく再生することは容易ではなく、そのためには多くのことを学び、考える必要があること。

② レコードの再生は音が変わるポイントが多過ぎて、理屈がわかっていないと割れ鍋に綴じ蓋を繰り返すことになるので、要注意。

③ レコード・プレイヤー:針、カートリッジ、アーム、ターンテーブル等で構成されているが、それぞれに様々な型式があり、その構造と音の鳴る原理、その長所・短所について理解が必要。

④ 昇圧トランス、リッツ線、その他消耗品についても同様。



⑤ モノラル盤をかける際には、レコード発展の歴史、イコライザーカーブについても学ぶ必要有。

⑥ レコードの再生は極めて繊細。レコード・プレイヤーの構造がわかれば、一番いい音が鳴るのは最初で、最後に向かって(針が中心に近づくにつれて)音が悪くなっていくことや、ハウリングを起こさないようプレイヤーの設置場所に十分留意しないと、床から拾った振動をまた針から増幅して、音が悪くなること等も理解出来るはず。

⑦ ともかく奥の深い世界であり、だからこそ楽しくハマる人が多く存在するのも、また事実。



3.レコード

(1) レコードに記録されているもの

 それは「録音した演奏」と単純に言いたいところですが、録音に使ったマイクの数だけある録音データを組み合わせ、エコーを始め、様々な処理をして出来上がるマスター(原盤)に収められた音源。

② ジャズの場合、特に顕著ですが、それぞれのレーベルの音、プロデューサーの音があるので、レコードを聴く時は必ず意識して聴くこと。

③ 余談1. ライブより録音音楽の方が魅力的になり得る点:ライブでは絶対に聴こえない音でも、マイクなら拾って合成して出来ること。例えば、ライブでは聴き取りにくいDsの繊細なプレイでも、録音音楽ならマイクを何本も設置し、その魅力にスポットライトを浴びせることが出来るから。

④ 余談2. ブルーノート、ECM、TBM、VINUSレーベル:世間一般では、音がいいと評判のレーベルですが、ノンシーのマスター曰く「どんなオーディオで鳴らしてもそれっぽい音がするのは、音を作り過ぎているからで、好みではない。」



(2) アナログ・レコードの製造方法

① その当時のマスターは磁気テープ。

② そのマスター・テープからラッカー盤、マスター・ディスク、メタル・マザーという工程を経て、レコードの原盤となるスタンパーを製作し、量産 (参考:こちら)。

③ オリジナルと呼ばれるのは、このマスター・テープから作られたもの。ただ、スタンパーは消耗品(その寿命は1~2千枚程度らしい)なので、同じスタンパーから製作しても、その初期と寿命間際では音質が違うはず。



④ オリジナル盤以外、例えば日本盤を製作する場合には、コピーされたサブ・マスターを元に、日本でbの工程を実施。ラッカー盤を刻むカッティングは音質に大きな影響を与えるプロセス (参考:こちら)なので、その結果、音が違うのは当然のこと。



(3) CDなどデジタル媒体の問題

① デジタルで出来たマスターから製作するのであれば、技術的問題はないはずだが、実際には下記のような問題が頻出。

② デジタル録音移行期(1980年代):技術的な問題に加え、旧来のアナログ的な感覚で録音したための問題多数。アナログとデジタルの大きな違いの一つは音域の広さ。アナログであれば聴こえなかった音域まで録音されてしまう、アナログであれば強調した方が良かったはずの音域が不自然に聴こえるなど。



③ 音作りの問題

a. 聴く側の媒体が多様化した結果、その設定をイヤホンやヘッドホン、ラジカセやミニコンポとするのか、ハイエンド・オーディオとするのかによって、音の作り方が全く変わる。ラジカセで聴いて一番いい音作りをしたものをハイエンド・オーディオで聴くといわゆるドンシャリで聴けたものではない。

b. 最近、ミュージシャンが「CDと同時にアナログ・レコードを作りました」と言う場合があるが、CDをイヤホン用でドンシャリ傾向、アナログ・レコードをハイエンド・オーディオ対応と違うマスターで製作。「レコードの音はいいでしょ?」と言ったりするのは、ご愛敬か?

④ 新たに生まれた弊害

a. 一聴した時、キャッチーに聴こえることから、音圧を上げた録音(ラウドネス・ウォー)が流行。

b. 実際には、音楽全体がのっぺりとして聴こえる最悪の録音。



⑤ アナログ・レコードの焼き直し盤の問題

a, 上述したとおり、当時のマスターは磁気テープであり、更には音源がマスターではなく、コピーしたものからであることも多い。

b. 「マスター・テープからのリマスタリングを実施して、音質が良くなりました」と帯に書いた特別仕様盤が高額で販売されているのは、その結果。

c. あの手この手で音質向上を図っているものの、磁気テープの経年劣化などによる音質低下の方が大きく、アナログ・レコードの方が音がいいなんてこともよくある話。

d. そもそもリマスタリングした時点で、元のマスター・テープの音とは違うもの。

e. 更には、リマスタリングの目的が、「イヤホン用で聴いた時、一番良く聴こえるように変更」、「一聴した時の効果を狙って音圧を上げた」などであれば、そんなCDをハイエンド・オーディオで聴くと悲しい結果になるのは必定。



4.その他の雑談

(1) 原音再生なんて、あり得ない

① オーディオの世界でよく言われる「原音再生」。その言葉を聞いて多くの人がイメージするとおり、その「原音」が「録音する対象の演奏そのもの」を指しているのであれば、それはあり得ない話。これまで記したとおり、オーディオで再生出来るものは「マスターに収められた音源」です。

② 但し、人によっては「原音」を「マスターに収められた音源」と言う人もいたりするので、注意が少々必要。

③ 更には、「マスターに収められた音源」自体が、あたかもそこで演奏しているように聴こえるように作ってあれば、そう聴こえるのが正しいというややこしい話でもあります。

④ 余談ですが、ライブで聴くよりジャズらしく聴こえる音源、現実にはあり得ないような美しい響きがたまらない音源、それらをうまく再生するオーディオが、世の中では人気商品となったりする訳です。

(2) いい音とは何やろ?と自分の中で腑に落ちるまで考えること

これに限らずだと思いますが、指針をしっかり考え、しっかり持っておかないと、何かに迷った時に往生します。オーディオの深い闇の中に飲み込まれないためにも、留意しましょう。

(3) ジャズは聴くしかない

① 10年聴いたら、10年聴いたレベル。ともかく、聴くべし。

② 唯一、勉強するとしたら、スタンダードの歌詞。


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汝が欲するがままをなせ

九州ジャズ・スポット巡りを中心に興味の赴くままジャズ・クラシック等について不定期に掲載。 タイトルはM・エンデ「はてしない物語」の含蓄に富んだ言葉で、サイト主の座右の銘。 ♪新しい秩序、様式が生まれる時代の幕開けです。この混沌を積極的に楽しんでいきましょう。危ぶむなかれ、行けばわかるさ、です。笑