大分・竹田(注1)にあるCafe' SlowBeat(カフェスロービート)さんは、熊本から大分に向かって国道57号線を走り、道の駅すごうを通り過ぎて550m行った左手にあるお店。
この地方に初雪が舞う中、猪野ご夫妻(注2)の行きつけの一軒ということで連れていっていただいたのですが、田代俊一郎さんが九州ジャズロード「改訂版」のコラム欄で触れられていたご開業13年目のお店でもあり、伺う前から興味津々。
お店に入ってみると目の前には、奥に向かって4人掛けのカウンター。
右奥を見ると自然光が溢れ、懐かしいダルマ・ストーブがどんと構えるテーブル席のフロアー(下の写真)があり、更には左奥にも広いフロアーを持つこの広いお店。
パイプ姿のよく似合う今年60歳のマスターと優しい笑顔が素敵なママのいる地元の方に愛されている喫茶店。
マスターはおしゃべり好きな方で色んなお話を伺いましたが、とてもマスターらしいと思ったのが、この地への想いが溢れたこのお言葉。
「親子続いた転勤族から永住の地を求めてここに。バイクと音楽と、そして自然を全開で堪能できる地…」
さらっとカッコいいお言葉ですが、実に奥が深いので、読み流してはいけません。
例えば、ここでおっしゃったバイクとは普通の400ccとかではなく、この存在感抜群の伊Ducati社のモンスター。。。そういう目で見ると、何だか趣味人の匂いがプンプンしてきませんか?笑
そして、転勤族とバイクを掛け合わせた結果、ローカル・ネタはお手のもの。我々ともそうでしたが、遠方からいらっしゃる多くの旅行客とも、そんな会話でいつの間にか盛り上がっているのだとか。
次に音楽。一階のカウンター後ろの小さなシステムで流されているのはクラシックとジャズで、その割合は大体半々だそうですが、リラックス出来る空間を演出する一環として手抜かりはなく、温かく優しい上質な音。
でも、これで音楽を全開で堪能?そう、これは謂わば、表の顔。
やっぱりちゃんと、裏の顔がありました。笑
それは、二階にある50人程度入れるライブ&オーディオ・スペース。
ライブの時以外は、マスターが閉店後に時間を過ごす優雅なスペースらしいのですが、実に羨ましい空間。
この日は初雪のせいか、他のお客さんがいなくなるという幸運が到来。。。ありがたいことに、ご案内していただきました。
その壁には、とても目立つ写真が一枚。
そう、あの故 辛島文雄さん(p)ですが、このトリオを結成してから亡くなられるまで、毎年ライブをここで開催されたとのこと。
その時のライブ録音を聴かせていただいたのですが、リアリティ・迫力共に満点で、何より演奏そのものの熱気がスゴくて、楽しい!
時々、イャ~!とか合いの手を入れながらどっぷり聴かせていただきましたが、こんな高いレベルの演奏をこんないい場所で聴いてしまうと、もう生半可なライブでは満足出来なくなるかも。。。苦笑
ダイヤトーンの中型スピーカーを中心に組まれたシステムを何の気兼ねもなく大音量で鳴らしておられますが、その木製三角屋根の響きの良さ等もあって、マスター専用座椅子で聴かせていただくクラシックも心地好いこと。
熱い辛島文雄さんのライブに、官能的なワーグナーのトリスタンとイゾルデの愛の死等、一端ではあると思いますが、マスターの全開の音楽を堪能させていただきました。
すっかり満足して、長居してしまった帰り際の会話ですが、これがまた印象的。
猪野ご夫妻の「(お店の開業は)焦らないで、スローで頑張ります」という発言に対し、マスターが一言。
「スローでいいけど、ビートはちゃんと刻んでね!」
。。。後日、このお店のHPを読んだらこのお店の名前に込められたイメージどおりでしたが(苦笑)、でもやはりカッコ良く、記憶に残る一言でした。
辛島トリオのライブ録音、もっと聴きたいなぁ、とふと思い出してしまったことも含め、マスター、またじっくり伺いますので、よろしくお願いいたします。
(ちなみに、このお店のHPの2019/01/26のコラムに我々の訪問について触れておりました。 )
【駐車場:有、喫煙:可】
(注1)竹田(タケタ)は大分県の南西部に位置し、瀧廉太郎が「荒城の月」の構想を練った岡城で知られる城下町、ですが、このお店はJR豊後竹田駅から熊本に向かって車で約20分の田畑の中にあります。
ちなみに最近、この竹田には都会からの移住者が増えているのだとか。。。ただその理由が面白く、最初は阿蘇を検討するものの値段等の問題から断念し、阿蘇の隣町であることからこの地を検討されるのだそうです。笑
【2019.2.13追記】早々に再訪させていただきましたが、今回は朝一番だったので、モーニングとして苺ジャム・トーストを注文。。。それにしても、この自家製ジャムが美味しかったこと!
一緒に行った「一粒万倍(イチリュウマンバイ・注4)」のマスターが頼んだホットオープンサンドも美味しそうだったことも、併せてお伝えしておきます。
尚、この日は、近くの二はぜさんを経由して佐伯のいとうさんに行く予定で時間があまりなかった上、他のお客さんがおられたこともあり、マスターとあまりお話出来ず、残念。
ダルマ・ストーブの暖かさに後ろ髪を引かれながらも、早々にお暇させていただいた次第です。
(注4)一粒万倍(イチリュウマンバイ)。。。猪野ご夫妻が今回決められた新しいお店の名前で、「稲穂は一粒の籾(モミ)が実って万倍にもなる」という意味を持つ縁起がいい言葉。
「大分の竹田という地で蒔いたこの一粒の種=ジャズを始めとする音楽文化が、この地でじっくり広がっていけば」という願いも込められ、こう名付けられたのだそうです。
初めて聞く言葉でしたが、意味をお聞きして納得。ミニトマト農家である猪野ご夫妻らしいネーミングで、実に素敵な理念だと思いました。
ママは「古処さんを見習って、50年はやりたい!」と意気込んでいらっしゃいますが(笑)、じっくり末永く、その夢を実現してもらいたいものです。
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