九州交響楽団の再始動コンサート、第387回定期演奏会に行って来ました。
九響の演奏会は、2月下旬より約5カ月ぶりとのこと。
私にとっても同月に行われた延原武春指揮フィルハーモニア福岡 第38回定期演奏会※以来のクラシックの演奏会。
※7/26に行われるはずだった第39回定期演奏会が延期となったことは残念ですが、半年後を楽しみにしています。
実は今回の指揮者 鈴木優人さんは一度聴いてみたかった今をときめく若手注目株の一人(注1)であり、ソリストの小菅優さんもずっと聴く機会を窺っていたピアニスト。
そんなこともあり、私にとってはこんな特殊なタイミングではない時に聴きたかった演奏会だったのですが。。。
新型コロナ明け初めてということで、緊張感の漂うスタッフの皆さん。
入場時、指示に従って距離を置いて並び、チケットを自分でちぎって箱に入れ、パンフレットも自分で取る等、いつもと違う状況もあり、どことなく緊迫感が漂うお客さん。
空港並みのサーモグラフィ・カメラには驚きましたが、全てはこの演奏会が無事に過ごせるためのご準備。
更には、ホールの座席は1席ずつ空けた指定席でしたが、その空けた1席毎にこのような違うメッセージが書かれた紙が貼られており、心が温まりました。
この演奏会開催のためにご苦労をされたスタッフの皆さん、本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。
さて、肝心の演奏会ですが、セレモニアルなとても素敵な時間でした。
1.演奏開始まで
・開始を告げる鐘の音すら懐かしく聴こえる中、理事長の桜井氏の寄付金支援(注3)に対する御礼等のご挨拶。
・(1席ずつ空けた座席ではあるものの)ほぼ満席のお客さんの中、オケ団員が舞台に登場。
・万感のこもったような歩みでステージに上がる団員にホール中の温かい拍手。
・団員の皆さんもずっと立ったままで、全員が揃ったところで一礼。
・この時点で感無量な雰囲気に包まれるホール。
2.プログラム
・当初の定期演奏会から一部変更された3曲で、休憩なしの約1時間(注2)。
3.1曲目:ベートーヴェンのエグモント序曲
・この日のために追加された一曲で、緊迫感と演奏出来る喜びが溢れた演奏。
・その拍手に応える中で、鈴木さんがガッツ・ポーズ。。。その気持ちもわかるものの、個人的にはちょっと苦笑。
4.2曲目:矢代秋雄のピアノ協奏曲。
・1967年に中村紘子の独奏、若杉弘指揮NHK交響楽団で初演された海外でも人気があるという名曲。
・予習として何度Youtubeで聴いてもピンと来なかった曲でしたが、やはり現代曲はナマで聴いた方が早い!と改めて実感。あの緊張感のある響き等は一度体感しないと伝わりません。
・ホールならではの静けさの中にかすかに響き進行するppp。その静寂を聴き入る満員のお客さん。そんな中、自由自在に歌う小菅さんのピアノ。それに呼応し、サポートする鈴木=九響。私にとってこの日の白眉でした。
5.小菅さんのアンコール:メシアンの前奏曲集第1曲「鳩」
・ピアノ協奏曲と同じ印象の美しいpppの曲だったので、同じく矢代さんの曲かと思ったら、何とメシアンとのこと。
・小菅さんの奏でる美しい音色、際立つ歌心。しみじみと聴き入りました。
6.3曲目:小出稚子「博多ラプソディ」
・この日のための委嘱作品で、山笠の櫛田入りの太鼓から始まり、博多手一本のリズムで終わる博多の祭りをテーマにした曲で、冒頭に作曲者の小出さんと鈴木さんがMC。まさか、今年お祭りがなくなるとは思わなかったけど、音楽で祭りをお楽しみくださいとの旨のご紹介あり。
・オケの多彩な響きを生かした楽しい作品でしたが、ppで描かれた懐かしい日本の町の風景が見えるような部分は特に好感を持って聴くことが出来ました。
7.終演後
・指揮者、団員全員がステージ上から去っても鳴り止まないホール中の拍手。
・ステージ上に戻る指揮者と団員に一段と鳴り響く大きな拍手。
・全員でおじぎされた後、ステージ上から手を振り、去って行く指揮者と団員。
・ホール内での撮影は禁止ですが、一度は全員ステージ上から去った後の写真であり、この特別な日の感動的な光景に思わず撮ってしまいました。おめこぼしいただきたく、よろしくお願い申し上げます。
私も含め、最後の一人が一礼をして去られるまで拍手を続けられたこのホールに集ったお客さん。
この心からの感謝の気持ち(注4)はきっと団員の皆さんに届いたものと思いますが、座席に貼られていたメッセージの一つのとおり、「コンサートがある『当たり前』の日常が贅沢なもの」だと実感した演奏会でもありました。
(注1)鈴木優人さんはバッハ・コレギウム・ジャパンの指揮者 鈴木雅明さんの息子さんですが、以前、マタイ受難曲を聴いた時にはチェンバロでご出演されておられたと思いますので、その時以来でしょうか?
九響の定期演奏会にデビューされたのは昨年19/3だそうですが、私の大好きなシベリウス、しかも中でもなかなか演奏される機会のない交響曲第6番を取り上げられ、素晴らしい演奏をされたとのこと※。
矢代秋雄のピアノ協奏曲で鈴木=九響が聴かせたオケ全力のppが本当に素晴らしかったので、「このコンビのシベリウスの6番ならさぞ良かったんだろうなぁ、聴きに行きたかったなぁ」とちょっとボヤいた次第です。
※日経新聞九州版の夕刊に掲載されたかんまーむじーく のおがた代表の渡辺伸治氏の原稿
(注2)元々のプログラムは「戦後75年へⅠ 邦人作曲家選~戦後から現在まで」と題された邦人の現代音楽の演奏会。
今回削られた武満徹の弦楽のためのレクイエム、伊福部昭のシンフォニア・タプカーラについては、後日、この鈴木=九響のコンビで是非聴きたいと思った演奏会でもありました。
(注3)九響への寄付金支援のサイトは下記のとおりですので、ご参考まで。
(注4)観客としての感謝の表現方法
この日は、ブラボー!等の掛け声は禁止とのことで、ホール中のお客さんがその感動を伝える方法を考えたものと思われます。そしてこの日は、団員の最後の一人がステージ上から去られるまで続いた拍手に結実したのだと思いますが、元々色んな問題があるだけにその難しさを痛感しました。
そもそも拍手、ブラボー自体、そのタイミング次第では迷惑極まりないものであるのも事実である一方、欧米では当たり前のスタンディング・オベイションでも、後ろのお客さんが見えなくなるからと非難される方もいる日本。
この新型コロナ明けコンサートの流行りとしてプラカードを持ち込む方がおられるのですが、純粋な気持ちでやっておられる方は微笑ましく思えるものの、FBで事前に予告する等、お祭り騒ぎ、自己顕示欲でやっておられるのが明らかになると話はまた違ってきます。
ステージ上の出演者の方々がどうお感じになられるかが一番大切だと思うのですが、周りのお客さんが迷惑だと感じるようなことはするべきではないとおっしゃる方の意見もごもっともで、人それぞれ。。。難しい問題ではありますが、これもポスト・コロナに向け、模索しながら作り上げていくしかありません。
今までがどうだった、こうだったと言っても仕方のない時代の幕開けです。
まずはそう腹を括り、そしてせっかくですので、新しい秩序、様式が生まれるこの混沌を楽しんでいきましょう。
危ぶむなかれ、行けばわかるさ、です。笑
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