今回は私がクラシックを聴くようになってから一番最初にハマった作曲家、ジャン・シベリウスの曲から、交響曲第3番をご紹介します。
もう今から34年前になる1982年、TDKオリジナル・コンサートというFM東京のクラシック番組が企画した「シベリウス・シンフォニー・ツィクルス(交響曲全7曲を演奏)」、 ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団の創立100周年記念来日公演は、今聴いても実にレベルの高い演奏でした。
その演奏を数週間にわたりエア・チェックした録音は愛聴テープとして何度も聴き返しましたが、その中でも好きでよく聴いていたのが、今回の交響曲第3番。ということで、おススメは当然ながら、このオッコ・カム指揮ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団のライブ盤です。
この交響曲第3番は、第2番という大作の後に書かれた小さくかわいい交響曲という位置づけにおいて、ベートーベンの第3番「英雄」の後に書かれた第4番のイメージ、でしょうか?ベートーベンの第4番は小さいだけで、意外に硬質でかわいくないような気がしますが(笑)、シベリウスの第3番は本当にやわらかくて、かわいい。そして、このイメージがこのおススメ盤のキーワードです。
コンドラバスの出だしが印象的でその後の展開部で第4番以降のシベリウスが垣間見える第1楽章。そして、その後に続く第2楽章のピツィカートと木管楽器の掛け合いの可憐で美しいこと!最終第3楽章も最後のコラール風なフィナーレの素敵なこと!!いつ聴いても鳥肌が立ち、涙が出そうになります。
先のブラームスの第2番でご紹介した諸井誠さんが「交響曲名曲・名盤100」でこんな感じのことを書いていました。「この曲がこんなに不人気なのは信じられない。どこかのバンドがメロディーを引用してもいいくらい」。本当に賛成です!
しかも、元々人気のなかった第3番は他の曲が見直されていく中、ダントツで取り残され、未だに評価もされず人気もなく、残念の極みですが、何故そうなってしまったのか?
シベリウスの曲と言えば、北欧のイメージというのか、超自然を想像させるような独特な音使いであったり、オーケストレーションであったり、音型等が特徴的なのですが、確かにこの曲は、変な言い方ですが、シベリウス臭が薄い。これまでの西欧音楽的に立派な第2番からシベリウス独自の世界に突入する第4番へ変革期の曲、と言ってしまえばそれまでですが。でも、そういった先入観を抜いて、このライブ盤を聴くとかわいく愛らしい曲なのです。
でも不思議なことに、他の演奏を聴くとそのかわいい感じがなく、如何にもその中途半端さが目立ちます。第4番以降に対するアプローチを適用して、サワサワするような音型を際立たせて鳴らす余りささくれ立った感じに聴こえたり、第2番の延長で立派に演奏しようして元気が良くなり過ぎたり大袈裟になり過ぎて、演奏がもたれたり、逆にスピードを速めすぎたり。
この曲は演奏する回数も少ないので、規範がまだ存在せず、様々な解釈による演奏が成り立ちやすいのでは?と勝手に想像しますが、それは第2番とは違って第3番がそれだけで取り上げてもらえる曲ではなく、交響曲全集という企画でのみ取り上げられる曲、であることもその大きな要因かもしれません。
この曲は、今のところ、唯一無二のオッコ・カムさんが指揮したヘルシンキ・フィルの演奏でどうぞ!と言いたいところですが。。。
今回、この稿を書くに当たってYoutubeを探していたら、フィンランドの指揮者エサ=ペッカ・サロネンさんが指揮したスウェーデン放送交響楽団の演奏がアップされていましたので、併せてご紹介しておきます。
これは個人的には第2楽章でもう少しねっとり歌ってほしいとか不満もあるのですが、そうは言ってもなかなか素敵な演奏でしたので、まずはこちらでどうぞ!
初出:2016.10.8 17:20、2023.1.7改訂
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