20世紀初頭に活躍した北欧フィンランドのジャン・シベリウス。
私がクラシック音楽を聴くようになってから一番最初にハマった作曲家であり、その後、私の人生にずっと寄り添ってくれている数々の名曲を書いた作曲家。
今回は、私がシベリウスにハマったキッカケについてご紹介します。
TDKオリジナル・コンサート(注1)というFM東京のクラシック番組、そして、その番組が企画した「シベリウス・シンフォニー・ツィクルス(交響曲全7曲を演奏)」をご存知でしょうか? もう今から40年以上前になる1982年、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団の創立100周年記念来日公演で行われたのですが、それは極めて画期的なイベント(注2)でした。
そしてそのライブ録音は全曲放送されたのですが、その後何度もアンコールとして放送される人気ぶりで、遂にはCD化されたほどですが、それもそのはず、今聴いても実に感動的な演奏で、未だにその魅力は減じていません。
更にこの演奏会とそのオン・エアーの影響と言い切っていいと思いますが、この後、日本クラシック界におけるシベリウスの認知度が大幅に上がった(注3)、その当時我々の愛読誌だったレコ芸でも「神秘に包まれた北欧の巨人」という副題で特集が組まれるという歴史につながります。
さてその当時の私ですが、クラシックを聴き始めたばかりでしたので、シベリウスがどういう位置づけの作曲家なのか、ヘルシンキ・フィルがどの程度のオケなのか、更には、この演奏会がどのくらいすごい事件なのかも含め、全く何もわかっていませんでした。
ただ、「きっと全曲演奏されるくらいすごい作曲家であり交響曲なんだ!」くらいの素直な気持ちで聴いたのが良かったのでしょうか?その素晴らしさに完全にノック・アウトされました。
この放送を数週間にわたりエア・チェックした録音(注4)は愛聴テープとして何度も聴き返すことになりますが、いつの頃からか、シベリウスの音楽が体内に浸透。
他の多くの名曲を愛聴するようになってからも、私の中でずっと大切な位置を占め続けているので、本当に有難い出会いだったと思う次第です。
(注1) TDKオリジナル・コンサートはその当時、主流だったカセットテープ・メー カーの雄TDKが国内で開催された演奏会のライブを録音し、そのまま放送するという番組で、この当時のクラシック愛好者にとっては、NHK-FMの海外演 奏会と共にどちらも欠かすことの出来ない両輪であり、その演奏・録音の質の高さも含め、今となっては考えられない素敵な番組でした。
(注2) ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団はシベリウスの母国フィンランドの首都にあり、交響曲第1番から第6番までは作曲家自身の指揮で初演したという歴史を持つシベリウス演奏のスペシャリスト。レコードもほとんどなく、交響曲第2番以外ほとんど聴いたことがなかった日本のクラシック愛好家達がいきなり本物を突き付けられた時に何が起きたのか、情報化の進んだ現代ではなかなか起こり得ない幸せな事件※1とも言えます。
ちなみに指揮者は2人いて、曲によって振り分けるという形式。交響曲第2、3、5、6番はフィンランド人で第1回カラヤン国際コンクールの優勝者、その当時の常任指揮者オッコ・カムさん。そして、交響曲第1、4、7番はフィンラ ンド人を母に持つ、日本におけるシベリウス演奏の第一人者 渡邉暁雄さん、だったのですが、本当に素晴らしい演奏会が全国各地で繰り広げられました。
※1 私は全く認識しておりませんでしたが、情報化が進んだはずの1999年においても、オスモ・ヴァンスカ指揮ラハティ交響楽団※2によるシベリウス・チクルス来日公演が同じような幸せな事件を巻き起こした模様。
これも、別頁に書いた「いい演奏を響きのいいホールで生で聴くと唖然とさせられるのが、シベリウス」のわかりやすい一例だと思います。
※2 このコンビは、スウェーデンのBISレーベルにおけるシベリウス大全集の看板であり、立役者。特に下記の交響曲第5番と交響詩「エン・サガ」の初稿版の演奏は、マニアの間で大反響を呼んだ一枚。
ちなみに、私自身が唖然とさせられたのは、ネーメ・ヤルヴィ※3指揮エーテボリ交響楽団※4の1991年来日公演@大阪・シンフォニーホール。交響曲第5番でしたが、大変衝撃的な事件でした。
※3 ネーメ・ヤルヴィさんは、N響名誉指揮者でもある人気指揮者パーヴォのお父さん。
※4 当時、BISレーベルから発売されたこのコンビの録音コンセプトは「いい演奏を響きのいいホールで聴いたような感じ」であり、「北欧の澄んだ空気感」だったと推察しますが、その素晴らしい演奏も相俟って、鮮烈そのもの。そして彼らのヒットが、その後のヴァンスカ&ラハティ交響楽団の大活躍やシベリウス大全集の製作につながったと思われます。
(注3) それまでシベリウスは交響曲第2番だけの作曲家だと思われていたのですが、決してそうではなく、第5番や第7番等も、名曲として認知されるキッカケになったと思われます。 またこれを機会にと、日本シベリウス協会が渡邉暁雄さんを会長にして発足、私も早々に入会した※等という話にもつながります。
※更に余談ですが、日本シベリウス協会のオフ会に参加させていただいたのも、忘れられない思い出の一つ。まだサーがつく前の若手バリバリの指揮者だったサイモン・ラトルさんがフィルハーモニア管弦楽団と来日し、シベリウスの交響曲第2番、アンコールで「鶴のいる情景」等を演奏したのですが、それに併せて開かれた渡辺暁雄さん達とのささやかないお食事会。高校生の私には夢のような時間でした。
(注4) その当時、愛用のラジカセでエア・チェックしていましたが、蛍光灯をつけるとバチバチッという音が入り、台無しとなるため、家族にこの1時間、絶対蛍光灯をつけたりしないように!等と注意したものですが、今となっては懐かしい思い出です。尚、この録音に使ったカセットテープは、SONYの緑色鮮やかな BHFだったことを思い出しました。。。TDKさん、ごめんなさい!
初出:2016.10.8 、2023.1.8改訂
【私のシベリウス】
①序章:こちら
②ようこそ!ここ~シベリウスの世界~へ
- 1.本文:こちら
- 2.聴くコツと作品分類:こちら
- 3.おススメの曲:こちら
(a)(大音量で聴く必要のない)親しみやすい魅力持ったシベリウス
(b) 一度ハマったら抜けられないファンタジーの世界へ誘うシベリウス
(c) ハマる人はハマるかも?の尖った魅力のシベリウス
- 4.おススメの曲おかわり+α:こちら
(a)こんな作品もいかが?ハマる人もいるかも?のシベリウス
(b)シベリウスの交響曲、世界共通No.1
(c)聴き比べ:交響詩「タピオラ」
(d)+α:語るシベリウス、作曲家、指揮者
③年表(参考資料一覧も掲載):こちら
④私がシベリウスにハマったキッカケ:本頁
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