熊本 八代・Jazz Bar FIRST(ファースト) ③18/08

キャッチ・コピーはいつも同じ「365日 台風が来ても朝3時までちゃんと開ける」熊本・八代(ヤツシロ)のJazz Bar FIRST(ファースト)さん

熊本に転勤後、初めて伺った際にはマスターご夫妻に今回の転勤を喜んでいただきましたが、八代は私の新居から1時間もあれば着くのですから、もう少しまともな常連さんにならない訳にはいかないと思った次第です。

ということでそれからも月日も流れ、少しは通ったところで、今回、念願だったマスターのご自宅を訪問させていただきました。

先日の北九州の後藤先生のオーディオ・ルームを訪問させていただいた際には「音源を100%味わうためにある」というオーディオで色んな知らなかった名盤を聴かせていただきましたが、さて、今回はどうなるのか?期待感いっぱい。

この大迫力のウェスタン・エレクトリックのメイン・スピーカーがご友人製の管球アンプにドライブされて奏でる音の「傾向」は、見た目どおりハイエンド・オーディオの音とは真逆の「これぞ昔ながらのジャズ喫茶/バーの音」。

曰く、押し出しが強く温かみのある、いわゆるジャズらしいガッツのある音、なのですが、この映画館用の銘スピーカーから奏でられる拡がりのある大音量と広くて天井の高い部屋(空間、ハコ)との関係がいいせいでしょうか?思いの外、威圧感は感じられず、そのせいか、長時間聴いていても疲れません。そして何より、その鳴りっぷりの良さはそれだけで快感。

また、特に解像度が高い訳でも繊細な訳でもありませんが、音楽の生き生きとしたリアリティが感じられ、レコードの世界に没入出来ました。

お店で使用されておられるJBLのエベレストとこちらのウェスタン・エレクトリック。この全く音の傾向が違うシステムでずっとジャズを聴き続けておられるマスター。

「名盤は何度聴いても、その都度新しい発見があって飽きないから名盤」とはよく聞く言葉ですが、本当にそうやってジャズを聴き続けておられるマスターがおっしゃると説得力が違います。

ただ、聴くシステムのレベルによっては何度聴いても同じように聴こえて、この喜びは味わえないのかもしれません。。。「新たな発見をするような聴き方をするためにはある程度の大音量が必要で、それを長時間集中して聴くにはいいシステムでないとキビしい」がこの考え方ですが、そうなると、もはや普通の家庭ではほぼ絶望的ではないでしょうか?

更にはもしかすると、そこで出番となるのが、ジャズ喫茶/バーかも。。。「名盤を何度も聴いて、その都度新しい発見する」という楽しみを求める人が未だにいるのなら、ですが。

この話はジャズの聴き方の変化という根源的な問題が関わってくる気がしますし、私自身未だに答えが出ていないので、一旦、棚上げにします。

さて、閑話休題。

このマスターは、ジャズとオーディオ、共に人並み外れたレベルとは言うものの、そのマニア度合いのバランスが取れた方。。。ではありますが、このオーディオ・ルームはその気になればあれこれ色んなものを入れ替えたり、抜き差しが簡単に出来るという音の実験場でもあるため、私のオーディオ・マニアの端くれとしての血が騒いでしまい、その後、私がオーディオ・マニア的なお願いをガンガンしてしまいました。

ということで、ここからは楽しい楽しいオーディオ・マニアの時間です。音楽好きの方、ごめんなさい!

【オーディオ・マニアの実験】

その1:同じ演奏のレコードとCDの聴き比べ・・・どちらもそれだけをかければ気持ち良く聴けるハイ・レベルな争い。ではあるものの、こうやって聴き比べてみると、CDにはカチッとした角が感じられ、CD臭さ(注)とはこれのことか?と思った次第。

その2:管球アンプの球の付け替え「ヴィンテージ物v.s.最新物」・・・これも同じくハイ・レベルな争いですが、こうやって聴き比べてみると、ヴィンテージ物のなめらかさ、艶っぽさは価値があると実感。

その3:SP盤のSPプレイヤーの高い機種v.s.安い機種v.s.通常のプレイヤーのかけ比べ・・・SPプレイヤーの針は、いい音がする代わりに盤面を削ってしまう鉄針を使用。その再生音はSP盤の命を削る音そのものですが、重量感のある音は唯一無二。

その中で、高い機種と安い機種の一番大きな差は共鳴体。バックロード・ホーンのような共鳴体がプレイヤーの下についている高い機種の方がその豊かな響きにおいて、圧倒的。

そして通常のプレイヤー。その出力先が件のメイン・システムなので「いい勝負では?」と思っていたのですが、全然違いました。

針圧の軽さがそのまま音の違いとなるのか、SPプレイヤーの重量感が感じられず、何となく物足りない感じ。。。もちろんこれも、比較さえしなければいい音なのですが。

その4:オープンリールによるマスター・テープの再生。。。これは初めて聴かせていただきましたが、近接マイクで録られた音が実に生々しい!

このマスター・テープから生まれたレコードと聴き比べしたくなりました。

その5:モノラル再生。。。何故かこのバックロード・ホーンの鳴らす音が心地良い。音源によっては、こういう軽量級システムで聴く良さもあると改めて思わされました。

それにしても、マスターが途中でおっしゃったこのお言葉、深かった。

「自分のオーディオの音は(先入観が入るので)自分では絶対にわからない。だから、人に聴いてもらって『納得出来た意見』を反映して、(客観的にも認められる)自分の音を作っていかなければならない」

これは「取り入れるのは自分が『納得出来た意見』であり、聴いた人が好き勝手に言う色んな意見をどう取捨選択するかもひっくるめて、結局最後は自分の感性の勝負。それを同時に磨き上げていくことも大切だ」ということも含んだお話だと理解しましたが、これぞ、オーディオ・マニアの王道を歩む方の見識、でしょうか?

こんなお考えは初めて伺いましたし、全くもって意外、かつ、驚きでしたが、それだけにとても心に響きました。

その他、オーディオの使いこなしとして以前教えていただいたインシュレーターの大切さがスピーカーだけでなく、機器の下も同じであることを改めて教えていただいただけでなく、実際にどの様に実践されておられるのかも確認出来、勉強になりました。

また、マスターは各種ケーブルも古いウェスタン等の電線を使ってご自作されるというので、その山積みになった材料置き場も見せていただきました。ただ、ご丁寧に作り方まで教えていただいた上に「もし作りたかったら、被覆線とか使っていいよ!」とおっしゃっていただいたのですが、相当根気のいる作業なので、とてもお願いする気にはなれませんでした。笑

今回、マスターに長い時間おつきあいいただき、わかったこと。それは「評価は比較対象があるから出来るもの」。。。これは後藤先生がジャズ批評誌の中でご発言されたコメントですが、今回、まさにそれを実感。

別に比較しなければ、どれも「いい音ですね!」と言っても問題のないレベルの話なのですが、最終的には産毛程度の違いまでも追及するのがオーディオ・マニア。ただただ、その奥の深さを痛感するばかりでした。

実験の後は気持ち良くメイン・システムで何曲か聴かせていただき、気分良くお宅を後にしたのですが、本当に楽しくも面白く興味深い体験で、あっという間に時間が過ぎ去っていました。

心から感謝すると共に、また伺わせていただきたく、引き続き、よろしくお願いいたします。

(注)CD臭さ・・・以前、ジャズ評論家 後藤誠一先生18/08【九州ジャズもん列伝Vol.3】の記事の(注5)で書いた「マスタークロックの精度を上げれば上げる程、自然な音、等身大の音に近づいていく」というお言葉はこういう所の差にも表れていたのだと思いました。


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九州でのジャズ冒険を中心に興味の赴くままジャズ・クラシック等について不定期に掲載。 タイトルはM・エンデ「はてしない物語」の含蓄に富んだ言葉で、サイト主の座右の銘。