このブルックナーの交響曲第4番はその「ロマンティック」という名において、昔は初心者向きと思われていた時期がありました。
かく言う私自身、その言に流され、初めて聴くブルックナーにこの曲を選択してしまった一人。。。、高校の入学祝いでブルーノ・ワルター指揮コロンビア交響楽団のLPを買ってもらった(注1)のですが、長いばかりでその当時の私には全く理解出来ず、その後15年以上のもの長きにわたり、ブルックナーを敬遠するキッカケになったという悲しい思い出を持った曲でもあります。苦笑(注2)
チェリビダッケさんの交響曲第7番でブルックナーに目覚めてからようやく好きになれたこの曲ですが、最初に気に入り、未だに一番好きなところは第4楽章のフィナーレ、最後の約5分。
ブルックナーの数ある交響曲の中でも印象的な静けさが訪れ、そこから延々高揚していく実に感動的なところで、そこに辿り着くまでに色々な聴きどころもあるとは言え、結局この5分程度のクライマックスが聴きたくて約1時間聴き続ける、というのが私のこの曲の聴き方。また、その演奏はチェリビダッケ=ミュンヘン・フィルに限ります。笑
実に特殊な聴き方だと思いますが、同じ部分を取り上げておられる方が二人もおられた上、その中で書かれている内容が更に理解出来る経験をしたことから、今回この記事を書いた次第。
その一人目は、私が多くの影響を受けた許光俊氏。その名著「世界最高のクラシック」の中でチェリビダッケさんのこの曲を紹介された文章があるのですが、まさにこの部分を取り上げておられ、初めて読んだ時はびっくり。。。わかりやすくその凄みをご紹介されておられますので、長くなりますが、部分引用させていただきます。
「(音源の対象はEMIから発売された1988年正規ライブ盤)第4楽章23分半からヴィオラがザンザンザン・・・と刻み続けるのを背景に、前景ではさまざまな楽器が重なってくるという音楽」「ヴィオラ奏者は何かに憑かれているかのようなすごい迫力で一心で弓を動かし続けていた。目は完全に据わっていた。」「音量が漸増していって、壮大な終結に到達するというカタルシス」「大きな音量で聴いていただきたい。」「楽譜通りではなく改変されている」
そして、今回この記事を書くキッカケとなったのは、先日聴きに行ったセミヨン・ビシュコフ指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の「わが祖国」。
曰く、弦楽器奏者が全力で弾くトレモロの凄さを初めて体感したから、なのですが、恐らく同じような強烈な音圧を伴っていたのではないかと思い、今回改めてその体感をイメージしながら演奏を聴き直したら更に感動。。。全くの妄想の世界ではありますが、録音の鑑賞自体がそれで補う世界なので、まぁ良しとしてくださいませ。
二人目は、Youtubeで見つけた「偉大な交響曲のフィナーレ(記憶が曖昧で間違っていたら、申し訳ございません)」と題した作品をアップされた方。。。何と、チェリビダッケ=ミュンヘン・フィル(1983年録画)のこの曲の最後のこの部分だけをアップされておられ、驚愕。
その時にこの記事を書こうかと思ったのですが。。。月日が流れたせいか、今探すと、その貴重なリンクが見つかりません。苦笑(注3)
仕方がないので、Youtubeでアップされた全曲版をリンクしておきますが、最後の約5分(上記の場合、1時間14分20秒辺りでいったん静かになる部分から)を是非ご覧くださいませ。(もしリンクが切れていたら、「Bruckner,4,Celibidache,Münchner」でご検索ください。)
(注1)この当時の主力の音源はFM放送。未だ聴いたことのないブルックナーなる大作曲家の交響曲が聴きたくて、一生懸命に番組表をチェックするものの、まだブルックナーがそれほど頻繁に演奏されていない時代のせいか、全くヒットせず。
「お祝いで欲しいものを買ってあげる」という叔母の有難いお言葉に乗じ、この当時頼りにしていた諸井誠氏のこれまた名著「交響曲名曲名盤100」からこの曲を選択。
ここに「きれいなメロディでいっぱい」「素人に随喜の涙を流させるに十分な要素を一杯持っている」と書いてあり、それを信じて、その第一推薦盤「ブルーノ・ワルター指揮コロンビア交響楽団」盤(注3)を買ってもらったのですが。。。苦笑
ちなみにこのLPを頼まれた叔母は、デパートのレコード店に行って取り寄せていただく等、相当ご苦労されたようです。今更ながら、改めて天国の伯母に感謝。
(2020.1.13.23.33初出)
【2020.1.16.01.01追記】
(注2)それでは、ブルックナーの交響曲入門はどの曲がいいのか?私は自分自身の経験上、また、今に至るまで、やはり交響曲第7番がベストだと思っていますので、為念。
(注3)見つけました!「One of the best symphonic endings 」というタイトルで、私が考えている部分より約1分早めからのスタートでした。笑
確かにこの曲を知らない人に聴かせるには、この方が劇的です。
(もしリンクが切れていたら、諦めて下さい。)
(注4)ブルーノ・ワルター指揮コロンビア交響楽団盤。。。気になって、何十年ぶりに聴き直してみましたが、驚きました。諸井氏はやはり正しかった?オケの弱ささえ気にしなければ、何ともメリハリのある聴きやすい演奏!もちろん、チェリビダッケさんのフィナーレの快楽はありませんが、むしろそこまではこちらの方がすいすいと聴きやすいかも、です。苦笑
(もしリンクが切れていたら、「Bruckner,4,Walter,columbia」でご検索ください。)
こうなってくると、その当時、一番世評の高かったカール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団盤も聴き比べる必要があるかも?等と考え、Youtubeで検索していると、こんな面白い演奏が!
現代に残る名匠エリアフ・インバルさんが、2016年の録音ですので、80歳というお歳ながらも、元気にフランクフルト放送交響楽団を振っておられる演奏。
そもそもこの方の出世作が、まさにこのコンビで録音したブルックナー全集。その時は初稿=レア物がウリでしたが、この演奏では通常のハーズ版。
実は私、この前年、彼が東京都交響楽団と演奏するこの曲を聴いており、それはそれで感動したのですが。。。速めのテンポを基調にしながらも、強弱速遅のメリハリを大胆に効かせた解釈が違和感なくハマった熱演で、オケも良く、かなり聴きやすいです。もし、チェリビダッケの演奏で挫折された方がいらっしゃいましたら、是非こちらをお聴きください。
ということで、カール・ベーム=ウィーン・フィルはまた後日。【続く】
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