長崎・JAZZ & BOOZE Milestone(マイルストーン) ⑤20/01

先日、新年ご挨拶に伺ってきた長崎の老舗ジャズ・バー JAZZ & BOOZE Milestone(マイルストーン)さんですが、これまでの訪問の中で書きたいネタが随分溜まりましたので、今回はそれを一挙大放出。

※尚、お店の場所をネットで探される時は、新店舗に対応済のグーグル・マップがおススメ。未だに旧店舗の場所を示すサイトが多いので、くれぐれもご注意を。

また、行き方を掲載した「前回の記事の(注1)」もご参考くださいませ。

このお店は、私が九州ジャズロード巡りを始めて4番目に訪問したお店であり、初めて訪問したジャズ・バー。

2014年2月のことですから、もう6年近く前になりますが、そのオーディオから流れるジャズが「聴いて良し、しゃべっていても邪魔にならない(注1)」ことに感心したことを鮮明に覚えています。

そして最近、このお店で感心していることと言えば、常連さんの寄贈品の多さ。

前回ご紹介した版画家 戸井三千男氏の素晴らしい作品群はその代表的なものですが、作品を紹介される時のマスターの嬉しそうなこと。。。

前回の記事以降、新たに飾られたブルーのスーツを着たコルトレーンやこの貴重なセロニアス・モンク等も何ともお洒落で素敵な逸品。

少し余談ですが、これを寄贈なさった常連さんとお会いした話は、長崎・波佐見のDoug(ダグ)さんの30周年記念ライブでアップしたとおりですが、今回そのことを勇んで報告したところ、怪訝そうな顔をしたマスターが一言。

え?あそこにいるけど?

そこで初めてカウンターの一番奥で飲んでおられた紳士と向き合ったのですが、お互いに全く顔を覚えていなかったこともあり、大爆笑の再会。カウンターの角で飲んでおられたカッコいいお姉さんまで思わず吹き出され、まぁ、カッコ悪いこと。その奇縁にびっくり!でした。

次に寄贈品で驚かされたのは、気に入ったレコードを寄贈用に購入され、わざわざ送ってこられる方の多さ。(ご自身のコレクションを寄贈される方は更に多いように思わます。)

その方々のことを語りながら、レコードを聴かせてくださるマスター。

「これ、この間いきなり届いたんだけど、レコードだけで何のコメントもないんだよね」等とボヤきながらも、隠せない喜びと満面の笑み。。。こんな光景を見たら、寄贈された方々もさぞご満足でしょう。

あとカウンター内ですが、前回(上の写真)と今回(下の写真)を見比べてみてください。オーディオの上から2段目に置かれたパワー・アンプが、銀色のソニー製から黒色の精悍なマスクのものに変わったのですが、おわかりになられますでしょうか?

そしてそのことにより、初めて訪問した時のマスターがおっしゃったお言葉「ソニーのパワー・アンプはちょっと役不足」が遂に解消。

新しく入ったこの黒いパワー・アンプはドイツ製の thomann S-100mk2 。わざわざトランスで200Vを115Vに落として使っておられるのですが、以前より音のグレード=切れ味の良さと静寂時の空気感がグンとアップ。

どちらもジャズの再生において気持ち良くなれる要素ですが、これもまた常連さんからの寄贈品。。。長崎に単身赴任しておられた方がご自宅にお戻りになられる時に寄贈されたのだそうですが、その方のことや音が良くなったこと等を嬉々として語られるマスター。その笑顔はもうこぼれんばかり。

せっかくの機会ですから、そんなマスターのお人柄についての私見も一言。

今回の音のグレード・アップにしてもそうですが、現状あるものを少しでも良くしたいと常に工夫しておられるのは、お客さんに喜んでほしいから。せっかくカウンターに座ってくれたのだから、知らないお客さん同士が少しでも交流してほしいとさり気なく橋渡しをされたり、お客さんの好みを探りながら、そのお客さんが興味を持ちそうなアルバムをかけられたり、ミュージシャンをご紹介されたりするのは、ご自身のなさることから何か新しい縁や音楽的な拡がりが生まれたら嬉しいから。(注2)

そんなことを裏もなく臆することもなく考え、実行されるご性分で、その武器はジャズと通ずる当意即妙、間の良い会話力と人懐っこい笑顔。

その旺盛なサービス精神(注3)や無類の会話好きぶりは、もしかすると今どきの流行ではないのかもしれませんが、我々昭和世代には有難い限りで実に魅力的。

極めつけは、この新しくなったお店に対する愛情の深さ。

全くお休みをお取りになられないので、お身体のためにも少しはお休みになられた方が良くありませんか?と言ってみたのですが、そのお答えのカッコ良かったこと。

このお店は僕が初めてスケルトンの段階から設計して作った空間なので、可愛くてしょうがない。今、一番安らげる場所がここ。

まさに真面目で一途、愛すべきジャズ・バーのマスター。

結局、全て、マスターのお人柄とご人徳の賜物なのでしょう。

こんな方があれだけ喜びを表現していただけると、確かに何かを寄贈したくなります。笑

ここで話を今回の訪問時に戻しますが、今年取り組み始めた「プロジェクト・リ!コルトレーン」。

詳細は先日書いた八代・ファースト【コルトレーン講座①インパルス時代】という記事のとおりですが、その勢いのまま、このお店でもコルトレーンをリクエスト。

まずは、クル・セ・ママ。。。ファーストさんで気に入ったこともありますが、このアルバムのジャケットを初めて見たのはこのお店の壁でしたので。

そして次にお願いしたのは、ファーストさんで好きになれるかも?と感じたトラジッションのA面。

あれ以来、Youtubeで何度か聴いたもののピンと来ることがなく、もう一度、大音量・いい音で聴きたいと考えてのリクエストでしたが。。。これがもうドハマリ!

最初は些細なことが気になり集中し切れなかったのですが、途中からはマスターの存在も消え、完全にこの1曲目Transitionの世界に没頭。全身全霊で感じ、追いかけるジャズ。最後の音が空間に消えていくと共に襲われる鳥肌ものの感動。

自然に俯いた姿勢になって聴き入っていたことも含め、もしかして、昔のジャズ喫茶のお客さんって、こんな感じだったのでしょうか?

実に素晴らしい経験をさせていただきましたが、この一曲で完全にお腹いっぱい。もうこれ以上は集中して音楽を聴くことが出来ない状態に。。。

だからこそ、というべきでしょうか?この後の2曲目Dear Lordの甘さにやっぱり癒されました。(このアルバムはコルトレーンの死後発売されたものですので、優れたプロデューサーによる選曲の妙、ということでしょうか?)

そして、ここでマスターがおっしゃったことにも深く同意。

「このインパルス時代のコルトレーンは精神状態がいい時でないと聴く気にならないし、日頃はそんなに聴きたいとも思わない。でも、時々無性に聴きたくなることがある。」

そんな時にマスターが選択されるアルバムは?とお聞きしたところ、答えは「至上の愛」が多い、とのこと。

この先、私もそう思う日が来るのかどうか、それも楽しみです。

この新しいお店にご移転されたのは、2018年6月。

早いものでもう1年半以上経過した訳ですが。マスターがますますお元気になられた感じで、何とも嬉しく思えた訪問となりました。

また今回の記事を書いていて見つけたのですが、ご移転される前にこんなことをおっしゃっておられました。

未開封のまま置いてある特別なアルバムが3枚あるんだけど、それを新しいお店で鳴らすのも楽しみ。

その3枚とは、アート・ペッパー:ミーツ・ザ・リズム・セクション、ソニー・ロリンズ:サキソフォン・コロッサス、コルトレーン:バラードですが、次回リクエストさせていただきますので、引き続き、よろしくお願いいたします。

【駐車場:無(近隣にコインパーキング多数有)、喫煙:可】


(注1)以前の記事で、このお店のオーディオから流れるジャズを評して、「聴いて良し、しゃべっていても邪魔にならないというジャズ・バーとして一つの理想」と書いたことがありましたが、未だにその評価は変わりません。

それまでの私にとってのジャズ・バーは、名古屋・錦のマイルスさん。つまり、ライブを聴かせるお店だと思い込んでいましたので、オーディオを聴かせるジャズ・バーは初体験。

ですので、ジャズ・バーの居心地の良さ、楽しさ等、このお店で学んだことは多いのですが、一番感心したのがこのことでした。


(注2)これまでマスターに教えていただき、購入したアルバムはこちら。

流れる曲が気になってそのジャケットを手に取った時、「これ、いいでしょ?」とマスターがタイミング良くお声を掛けてくださったチェット・ベイカー:SOMEDAY MY PRINCE WILL COME、閉店直前の訪問だったにも関わらず、そこから一枚丸ごと聴かせていただき幸せな時間を過ごした本田珠也:Save Our Soul(本田竹廣トリビュート・アルバム) 等、それぞれにこのお店の思い出が刻み込まれているのも嬉しい話です。


(注3)マスターの旺盛なサービス精神から教えていただいたネタを少しご披露。。。このアルバムの写真知る人ぞ知るジャズ評論家 油井正一氏ですが、このデザインにはどこか見覚えがないでしょうか?

しかも、そのタイトルは、the amazing shoichi yui。。。そう、このバド・パウエルの名アルバムのパロディで、遊び心満載。

東芝EMIさんがブルーノートのアルバムを取り扱うことになった際に販売促進キャンペーンで作られた非売品のサンプル・アルバム。

その当時雲の上の存在であった油井氏が各地のジャズ☆スポットに出向かれ、ブルーノートのアルバムを何枚か購入するともらえたのだそうですが、その効果は絶大。

若かりし頃のマスターも喜び勇んでゲットされ、今でもお宝の一枚なのだそうです。

また、この楽器ケースのサインはフレディ・ハーバードが長崎公演で来た時のものだそうですが、歴史のあるお店だけにこんなネタも満載。

次にどんな新しいネタを教えていただけるのかな?そんなことを考えさせるのも、このお店を訪問する楽しみの一つです。


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九州でのジャズ冒険を中心に興味の赴くままジャズ・クラシック等について不定期に掲載。 タイトルはM・エンデ「はてしない物語」の含蓄に富んだ言葉で、サイト主の座右の銘。