大野和士さんが指揮する都響のアクロス福岡での演奏会に行って来ました。
大野さんは以前、ここ福岡でワーグナーのものスゴい重厚な音を響かせて以来、都響は一昨年インバルさんの指揮でワーグナー&ブルックナーの躍動感溢れる演奏を聴いて以来ですが、大野さんの都響は初体験、しかも、ブラームスのビアノ協奏曲第1番と交響曲第4番という重厚なプログラム、更にはピアノがニコライ・ルガンスキーさんという評判の高いピアニストでしたので、とても楽しみにしていました。
まずはピアノ協奏曲第1番でしたが、残念ながら、ピアニストのルガンスキーさんが急病で来日中止!先日、ヴァイオリンのチョン・キョン・ファさんのバッハの無伴奏ソナタ&パルティータ演奏会も福岡は急病のため中止、という憂き目にあったのですが、どうも今年は、名演奏家との巡り合わせがちょっと良くないようです。苦笑
肝心の演奏ですが、何が原因だったのかわかりませんが妙に音楽が堅苦しく、対話しようとするオケとピアノがどうにもスレ違ってるように感じ、そもそもコントラバス6本ではアクロス福岡は鳴らないし、と、とても残念、かつ、眠かったです。
ブラヴィ!と叫ぶ人もいた盛大な拍手も、何度も出て来てはお辞儀だけして引き下がる代打ビアニストに尻つぼみ(福岡のお客さんの拍手は、相当いい演奏であっても鳴り止むのが早い。苦笑)で、アンコールもなし。。。
ということで、気を取り直して、交響曲第4番に期待!でしたが、これが、さっきの演奏は何だったのかと思うぐらい、コントラバス8本のフルオーケストラで奏でるブラームスの醍醐味満開、音のダイナミクスも色彩もありとあらゆる表現を駆使した昔ながらの正統的、かつ、感動的な名演。。。こんな演奏が聴けるから、やはり演奏会通いはやめられません。
それにしても都響のブラームスと言えば、以前 名指揮者ジャン・フルネさんの引退演奏会で聴いた交響曲第2番でも素敵な響きでしたが、その響きに艶、厚みが出てきたのでしょうか、特に弦!本当にその音だけでため息が出るくらい、素晴らしい。。。
そして、その素敵なオケをドライブする大野さんが更にスゴい!
まず、ほんの少しだけ長く伸ばして入った出だしの弦の響き。これまで聴いたことがなかったゾクゾクするような響き。。。昔、往年の大指揮者フルトベングラーのこの最初の音が凄かったという文章を読んだことがありましたが(CDで聴いても、ちょっと長いんだ、ぐらいでした)、まさにこんな響きだったんでしょうね。。。もう最初からブラームスの、大野さんの世界に引きずり込まれてしまいました。
その後も、フレーズのタメというのか、少し引きずるような音の処理による重厚感とその対比として、厳しく音を重ねていった後のフワッと音を乗せる絶妙なやわらかい音。。。そのギャップに幾度となく、鳥肌を立たされ(?)、大きな盛り上がりをみせて終わった第1楽章。。。その時点でもう、お腹がいっぱい。一息ついた後、思わず、ブラヴォー!と叫びたくなりました。笑
そして、第2楽章。途中で弦楽合奏が紡ぎだした静謐で優しさに満ちた響きはもはやこの世のものとは思えぬ美しさ。。。思わず、涙が出そうになったほどで。。。
その後の第3楽章も理路整然と(?)しっかり盛り上がり、第4楽章も深い息遣いの立派な音楽でしたが、やはり、第1、第2楽章の凄演に尽きました。
尚、万雷の拍手と共に、ビアノ協奏曲の時にはなかったブラヴォーが多くかかり(ピアノ協奏曲の出来の問題?それとも儀礼的に最終演目だから?どちらかわかりませんが。苦笑)、ハンガリー舞曲第2番というマニアックなアンコールで終演。
これで、以前、上岡敏之指揮九響演奏会の時に書いたスゴい日本人指揮者の「今」を一通り聴いたことになりますが、やはりそのレベルの高さはハンパではありませんでした。。。ただ、福岡だけの話かもしれませんが、クラシックの演奏会で見かけるお客さんの大半は老齢の方。こんなスゴい音楽が、才能が次世代に聴かれず廃れて行くのでしょうか?ジャズ・バー同様、滅びゆく文化、なんでしょうか?とても残念でなりません。
その一方で、聴衆がいなくなると危惧しているのに、演奏家だけは次世代にも有望な方が次々と育っているようで、中でも今一番気になっているのは、題名のない音楽会でもよく見かける新進気鋭の若手指揮者 山田和樹さん。機会を是非作って彼の音楽を聴いてみたいと思っています。
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