大分・JAZZ喫茶 NAIMA(ネイマ) ②19/02

大分にあるJAZZ喫茶 NAIMA(ネイマ)さんを約1年ぶりに訪問してきました。

前回訪問した際は、「ちょうどマスターがお帰りになられたばかり」とのことで、少しママとおしゃべりをし、何枚かジャズを聴かせていただいて帰ったのですが、今回もマスターはご不在。

「まぁ、これも縁だし、仕方がないかなぁ」等と思いながら、毎回楽しみにしているアドリブ定食を注文したのですが、お店の中をよくよく見てみると前回より状況が悪い?!

このお店の特徴の一つは、いつ来てもジャズ研の大学生、もしくはそのOBと思われる若い常連さんが気ままに時間を過ごしておられること。

前回はそんな常連さんしかいらっしゃらなかったので、気の向くまま大音量で聴かせていただいたのですが、今回はスピーカーの前の席で女子会開催中。。。どうしよう?これも、ジャズ?流れに合わせてフェードアウトするのが、ベスト?悩ましい。

ちなみに、この写真左端の白いソファにちょこんと座っている、ぬいぐるみにしか見えない白い犬がこのお店のアイドル犬 リコちゃん。

アドリブ定食をいつもながらに美味しくいただきながら、「これを食べ終わるまでに閉会しないかなぁ」と期待していたのですが、食べ終わっても全くその素振りが見えない。

そこで現状打開を図るべく意を決して、ママに甘えて、ご相談(注)。。。マスターって、いらっしゃいます?

この日はマスター、近くのご自宅でお休みの日だったのですが、ありがたいことにお越しいただけることに。

これまでタイミングが悪く、このマスターとお話する機会を得たのはこれで2回目。

しかも以前お会いした時はかなり飲んでおられてご機嫌でしたので、素面のマスターとお話させていただくのは今回が初めて。内心、かなり緊張。

というのも、このマスター、どうにもこうにも元々のイメージが悪い!笑

曰く、この九州ジャズロードの取材時に「ジャズは坂道を後ろ向きに下る疾走感」といった禅問答のような受け答えをして、私の敬愛する筆者の田代俊一郎さんを困惑させたマスター。更にはその中で、ハード・バップに興味はないとも公言し、明快な田代さんの筆を曇らせた唯一の異端児。しかも、一番最初に訪問した時の常連さんがおっしゃった言葉が「0か100の人。会えなくて良かったんじゃないですか?」等々。

もし、前々回の訪問でこのマスターが常連の皆さんから愛されておられるのを知らなければ。。。全面戦闘態勢で臨んでいたはず。苦笑

マスターがいらっしゃって、ご挨拶したのもつかの間。マシンガン・トーク。興に乗ると止まらない。そんな中、どこからどう話が転がったのかわかりませんが、飛び出した衝撃的な一言。

「最近、新譜を聴かなくなったから、もうジャズ喫茶のマスター失格」

その真相はともかく、その理由でマスター失格と言い切られたマスター。ものスゴくカッコ良かった。でも他日、それを聞いた時に若い常連さんが言ったという台詞がまた秀逸。

「今、教えてもらったこのアルバム、マスターにとっては新譜でなくても、僕にとっては新譜です」

さすがにマスターご自身もほろっときたそうで、マスター冥利に尽きるとはまさにこのこと。また、このやり取りだけでも、このお店の日頃の雰囲気の良さが偲ばれます。

その他も面白く興味深いお話が連発。

ピアニストのスティーブ・キューンは、マッコイ・タイナーが来て、コルトレーンからクビになったイメージがあったりするけど、完全に過小評価!

ECM時代のこのアルバム、この曲はスゴいんだから。。。って、聴いてみたいけど、女子会、未だに終わらず。

最近の日本人ピアニストでは、とおススメいただいたのが石田幹雄さんで、まずはソロ・ピアノの「時景」。

何とこのアルバムは、年末に福岡・太宰府のドルフィーズのマスターから教えていただいたばっかり!

このお二人、系統が近いかも、と想像もつかなかった思いつきに一人ニヤニヤしてみても、石田幹雄トリオの話からそのドラマー本田珠也さんの話でひとしきり盛り上がっても。。。女子会、未だに盛り上がり中。

マスターのご開業するキッカケとなったお店が、佐賀・鳥栖のジャズ喫茶 コルトレーンコルトレーンさんだったという話については前々回お聞きしたとおりですが、今回は更に、若かりし頃に通っておられたジャズ喫茶について伺ってみました。

そのお答えは、大分のMODERN JAZZ SPOT LIGHT HOUSEさん。

スピーカーの上に山下洋輔トリオの三人が飾られているような、正統派に対するアヴァンギャルドなお店だったとのこと。。。名前からしてわざわざ「MODERN JAZZ SPOT 」と名乗るお店です。何だかマスターらしくて、思わず笑ってしまいました。

その他、ジャズが普及しない理由として「ビートルズは12枚のアルバムで世界を変えたし、それだけでコンプリート。マイルス、エヴァンスは200枚以上。チェット・ベイカーでも200枚。誰がそんな音楽を聴く?」と、故・中山康樹さんのお言葉を教えていただいたり、あちらこちらに飛び火しまくるお話。

そして!ようやく女子会がお開き。閉店の約30分前。。。その後は大変!

CDプレイヤーが変わったことにあまり触れる余裕もなく、教えていただいたこのアルバムを聴かせてほしい、あのアルバムを聴かせてほしいとお願いしまくる私に、苦笑交じりながらもきっちりご対応くださったマスター。

じっと聴きながら、なるほど、これはスゴい。。。と絶句気味の私にドヤ顔のマスター。

そして、スティーブ・キューンのこの曲 Motilityでおっしゃったのが、「これが九州ジャズロードで言ってた『坂道を後ろ向きで下る疾走感』」。

え?!これでしたか。なるほど!と感覚的にスコンと納得。

でも一方、あの言葉だけではそりゃわからないでしょう、と思わずツッコミたくなりましたが、有無を言わさぬ圧倒的な演奏。

その後も、板橋文夫オーケストラの気になっていたアルバム「69」が置いてあったので、これもいいですか?とお願いして、その音のカオスに思わず、イェ~!等と呟きながら浸っていると。。。何やら1つのアルバムを探し当てられ、持って来られたマスターが厳かにおっしゃいました。

「じゃあ、これで最後ね」

板橋さんのインナ・センチメンタル・ムードでしたが、板橋さんの最初のやわらかい一音で悶絶、もう幸せ!

こんな夜があるから、ジャズ☆スポットめぐりはやめられない。

閉店時間を忘れて楽しんでしまい、申し訳ありませんでしたが、また伺いますので、引き続き、よろしくお願いいたします。

【駐車場:有、喫煙:不可】


(注)恐らく常連さんにとっては、このママがネイマの顔。

いつも優しく若い常連さん達と接しておられるお姿はまさにみんなのお母さん。そして、彼らのママに対するちょっとした気配りや少し甘えた感じを見るにつけ、いいお店だなぁと羨ましく思っていました。

今回、マスターが来るまでの間、NY在住のドラマーのお嬢さんのお話等々、ママとお話させていただいたのですが、少し常連さんの気分を味わえて嬉しかったです。

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汝が欲するがままをなせ

九州ジャズ・スポット巡りを中心に興味の赴くままジャズ・クラシック等について不定期に掲載。 タイトルはM・エンデ「はてしない物語」の含蓄に富んだ言葉で、サイト主の座右の銘。 ♪新しい秩序、様式が生まれる時代の幕開けです。この混沌を積極的に楽しんでいきましょう。危ぶむなかれ、行けばわかるさ、です。笑