福岡・久留米にある55年超の大老舗 Jazz Shop Roulette(ルーレット)さん。
久しぶりに再訪しましたが、一歩足を踏み入れば、そこは老舗ジャズ・スポットの得も言われぬ空気感、何だかホッとする居心地の良さ。
でも、その変わらぬ雰囲気の中、若い常連さん達もいるのが、このお店の強み。
まだお若い二代目マスターと裏マスターが、先代からの古い常連さんをしっかり押さえつつも、若い人も入ってきやすい雰囲気を作っておられることから生まれたこの状況。
ジャズ屋は一代限り、との言葉もありますが、世代交代がうまくいった稀有なお店の一つ。
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【以下、2020/10の記事を転載】
1965年のご開業で今年で55年目となる福岡・久留米にあるJazz Shop Roulette(ルーレット)さんは、多くの門下生(注1)を輩出して来られた九州ジャズ・スポットの大老舗。
初代マスター(注2)の息子である二代目が35年の歴史で幕を閉じるかと思われたこのお店を引き継がれてもう20年。しかもこのマスター、まだ40代半ばとお若いのに年長の常連ジャズ者に一歩も引けを取らないジャズ屋のオヤジっぽさ満点(注3)。
昔ながらのジャズ・スポット文化を九州の中で最後まで残してくれるのは、このマスターであり、このお店と期待しております。
このお店は天井が低く長細い形状で響きがいいのですが、その空間を鳴らすスピーカーは奥に堂々と鎮座するダブル・ウーファーのJBL。そしてそれを駆動するのは、マッキントッシュのアンプ群(プリ:C-34V、パワー:MC2500)。
ちなみに、タバコの煙から大切なオーディオ機器やレコードを守るためにガラスで遮断された部屋があるのも、昔ながらのジャズ・スポットならでは。
通常のボリュームは大き目とは言うものの、会話は出来る程度ですが、この気合いの入ったジャズ・バーらしい音と雰囲気を私はとても気に入っています。
ただ、このシステムの実力は?と問われれば、それは大音量で聴いてみて初めてわかるというもの。
大音量にしても、うるささや荒さは無く、全身を包み込んでくれるその音は現マスターが腐心して築き上げられた(注4)低音・高音のバランスの良さから来るもの。大音量なればこそ際立つ静寂の緊張感、そして45年以上の年季が入ったスピーカーとは思えない音の切れ味の良さ・空気感の再生がジャズの魅力(注5)を存分に引き出してくれます。
これまで私が聴かせていただいた中でのこの一枚はファラオ・サンダースのLIVE(注6)。
元々この名盤のことは知っていましたが、スピーカーが喜んでいるような大音量再生で聴かせていただき、「こんなに凄い演奏だったんだ!」とその認識まで変わってしまいました。
この他にも色々聴かせていただき、気持ちいい音を浴びると自然に笑みが浮かぶものだと改めて思わされましたが、このお店でこのような大音量に行き着くには相当なツキが必要です。
周りにお客さんがいないこと、もしくは大音量OKな常連さん達ばかりであること、そして何よりマスターを興に乗せること等ですが、それなりの繁盛店ですので、ツキがない時は「これもジャズ」とつぶやいて、あっさり諦めてくださいませ。
個人的な話になりますが、久留米インターから車で約10分(西鉄久留米駅からも徒歩10分程度)ともっと訪問していてもいいはずなのに、不思議にタイミングが合わなかったこのお店。
これを機会に巡り合わせが変わることを祈っております。
(注1)多くの門下生。。。まず、このお店の従業員を経てご開業されたのは、柳川・グルーヴィさんと同じく久留米のエイト・モダンさん。
また、大宰府・ドルフィーズさんや閉業された古処さん等、ジャズ・スポットのマスター達も開業される前はよく通っておられたようですし、先日「レフトアローンの真実」という記事でもご紹介した久留米ジャズ・クラブ代表の江越(エゴシ) さんのようなコアなジャズ・マニアも数多くご輩出されています。
(注2)初代マスターと3年前にお亡くなりになられたママ。。。ママには会う機会を作れたはずなのに、タイミングが合わず残念。
決しておしつけることもなく、黙って聴いてみろ。良かったと感想を述べると「良かろうが」とボソッとおっしゃったというこの初代マスター。
この方と言えば、この一曲「ハッシャ・バイ」。
昔からこのお店では、東京から来られるミュージシャンのライブを数多く開催してこられましたが、このお店では必ずこの曲を演奏するのがお約束だったそうです。
(注3)ジャズ屋のオヤジっぽさ満点。。。と言ったら、継いだ時はオヤジじゃなかったけどね、と苦笑されたマスター。
マスターがこのお店を引き継がれたのは、初代マスターが突然亡くなられた翌年の2001年。ママがお店を引き継がれたものの、やはり男手がないと大変とのご判断でお勤めになられていた銀行をご退職され、東京からUリターン。
お店を世襲されたという意味では福岡・春吉のニュー・コンボのマスターが同志(注7)とのこと。
現在マスターは別のお仕事もお持ちで、お店に入られる日は火・木・土。
でも、他の日も常連さん達の気持ちをしっかり握っておられる裏マスター(?)がいらっしゃるので、いつ訪問しても問題ありませんし、遅い時間になると仕事を終えられたマスターがいらっしゃったりもします。
(注4)二代目としてマスターが引き継がれた当時はオーディオのこともよくわからず、東京・吉祥寺のメグさんの企画でブルーノートのオリジナルの聴き比べの会が開催されたものの、その当時のシステムでははっきりその違いがわからなかったのだそうです。
それ以来、随分勉強しシステムも改良されたので、今では音源次第でジャズ屋らしい音も出せば、ハイエンド・オーディオみたいな音も出せるとオーディオ・マニア的側面も兼ね備えておられますが。
(注5)ジャズ再生の魅力の一つに音質もある、とお考えのマスター。私も全くの同感で、いい演奏・録音はどんな音質で再生してもその良さは伝わりますが、本編で述べたファラオ・サンダースのLIVEのように、いい音質で聴けば、更なる感動があるのも事実です。
ヘッドフォンで味わう高音質もありますが、ライブでなくとも空間・空気感が体感出来る大音量のお店のジャズ、ジャズ・オーディオ再生のスゴさはやはり別格です。
(注6)このファラオ・サンダースのLIVEのレコードは神奈川からお越しになられ、このお店の音に感激されたお客さんが自宅ではもうレコードが聴けなくなったからとご寄贈されたもの。
このボリュームで聴くと身体まで熱くなるからいいよね!とおっしゃるマスターに一緒に聴いておられた福岡の誇るジャズ・シンガー西田麻美さんもこれいい!とお墨付き。
いや、本当に聴けて良かった、お腹いっぱい!今ではマスターの愛聴盤の一つというのもよくわかる一枚でした。
(注7)ジャズ・スポットの後継者問題。息子さんがお店を継がれることはあってもなかなかジャズやオーディオ好きな方は少なく、そもそもオーディオ自体、マスターによって音は変わるもの。
基本的にマスターが変わればお店も変わると考えるべきですが、このお二人は高い志を持って偉大な初代の跡を継いでおられるということだと思います。
ただいずれにせよ、初代の頃はこんな大音量再生が日常で、会話なんて出来なかったのだととか。
また今となってはレコードでしか名演の聴けない昔のミュージシャン達を二代目マスター達が生で聴く機会があった訳がない等、時代の違いは致し方ありません。
ということで、もしそういう逸話が聞きたければ、まだ古いマスター達のお店が残っている今が最後のタイミングです。迷わず訪問しましょう。
いつまでもあると思うな、ジャズ・スポットです。
【駐車場:この犬のいるお店の正面に向かって右側の並びに契約駐車場あり(わからない場合は電話をされてご確認されることをおススメします。) 喫煙:可】
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【注】以上の記事は2020年10月時点の情報ですので、最新情報は下記HP等、お店に直接ご確認願います。
【お店のHP】
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