【待望!店のジャズ】熊本 南阿蘇・オーディオ道場⑥20/05

このサインのとおり、新型コロナ対応というより熊本震災からの見事な復活(注1)について語るべきことが多かった今回ですが、書くに当たりまず悩んだのはここを何と呼ぶべきか?

ジャズ喫茶は以前レポートしたとおり震災のため、ご廃業されたので、今となってはオーナーである片山昇画伯のアトリエ、画廊、美術館。まぁ、ここでオーディオ修理、販売店もなさっておられるので、引き続きお店と呼んでもいいのですが、私がしっくり来る呼称は「道場」。

「維持・安住」という言葉がない片山さんの辞書。これはオーディオ・システムについても同じで、私からするとどれだけ素晴らしい再生システムになったとしても更なる高みを目指して施されていく改善。その飽くなき求道精神にいつも恐れ入るばかり。

ただ今回、身を持って体感し理解出来たことは、ここが再生芸術としてのオーディオ・システムの道を追い求める場であること、そこから元々お店の名前を「オーディオ道場」と名付けられたのであろうということ。。。ということで、その由来や精神に敬意を表しての「道場」です。

私がこの道場を訪問するのは約1年半ぶりだったのですが、昨年1年間訪問出来なかったのは大失敗だったようで、今回は驚きと感動のオン・パレード(注2)。

最後は片山さんに「もう今日はお腹いっぱいですので、帰ります」と告げたぐらい。笑

片山さんのオーディオ・システムがスゴいことは改めて言うまでもないのですが、その凄みがここまで全てハマった(注3)のは私にとって初めてのこと。

中でもクラシックの大オーケストラ作品の再生に至っては、オーディオ・システムを使った再生芸術と呼べる域に達していたと思います。

その主役は、このロイヤル・アルバート・ホールでも採用されていたという英VITAVOX社のBass Bin。

数年前から何度も聴いてきたこの幅1.0m、高さ2.2m、奥行0.8mの業務用スピーカーには前回も驚かされましたが、今回の進化ぶりは桁違い。

今回このスピーカーが奏でたのは、ここでしか聴けない、凄いとしか言い様のないレベルの音楽。

天地を揺るがすように鳴り響く音、圧倒的な音圧から生み出される非日常の感覚、その対比として生まれるpppの静寂、無音の尋常ではない美しさ。。。それらはホールの響きの中で味わえるものとは少し違いますが、逆に、これこそ作曲家自身が望んだ音・響きだったのでは?と思えた感動的な体験。

しかもその静寂の中、外から聴こえてくる小鳥のさえずりまでこの道場での音楽の一部。

最初にマーラーの交響曲第5番から第1楽章を聴かせていただいたのですが、あまりにも素晴らしかったので、ブルックナーの交響曲第9番の第1楽章までお願いしてしまったほど。

自らのことをオーディオ演奏家(注4)とおっしゃったことからの推測ですが、恐らくこれらクラシックの大オーケストラの再生において片山さんが目指しておられるのは、よく言われる原音再生ではなく、その作曲家が描きたかった音楽そのもの。

レコードやCDといった録音データはあくまでもその素材でしかなく、しかもここが先に述べた「道場」であるが故、今回限りの一期一会の音楽であり、それが故にこれは芸術。

オーディオ・システムを使った再生芸術とは、何度でも同じ音楽が聴けるからいいのでは?と音楽愛好家としては言いたくなるのですが、芸術家である片山さんからすると、元々音楽という芸術はその場一回限りのものであり、そもそもこれでいいということは何一つない。どこまでもより新しいもの、より高い次元のものを追求し続けるのが芸術というもの。。。きっと、このような返事が返ってくるのではないでしょうか?

また次回もこのような素晴らしい感動を味わえるのかどうか?

どう変わっていくのか、どこに向かって進んでいくのか、誰にも想像出来ない芸術家の新作と同様、オーディオ演奏家・片山昇の新作発表会の場がこの道場ということなのでしょう。次回をまた楽しみにしたいと思います。

全国的に見ても、唯一無二のこの道場。

もしこの辺りまで来られたならば是非立ち寄ってほしい場所には違いありませんが、「道場」故、お支払いがオーディオ購入・修理以外に発生しないので、手土産ぐらいは持って行くことにしています。

いつも片山さんに「別に気を遣わなくて、いいよ!」とおっしゃっていただくのですが、どうせなら「奇才・片山昇のワンダーランド」という施設にでもして、入館料を取っていただいた方が気が楽なのに等と思ったりもする次第です。

本文は以上で、下の映像はこれまでにも掲載してきたイギリスのアーティスト Baby Queens のPV。

ここで、震災半年後の道場の映像と片山さん達の演技をご覧いただき、ちょっと一息入れてください。

というのも、ここから注記に入るのですが、本文同様、長く濃い内容となります。

大変恐縮ですが、それがこの道場。。。どうぞ頑張って、おつき合いくださいませ。

(注1)熊本震災からの見事な復活ぶりとして、まず挙げるべきはこの道場に辿り着くまでの道※が広がっていたこと、屋根を始め建屋等の外観がきれいになっていたこと。

※これは県道28号線から阿蘇グリーンヒル・カントリークラブのクラブハウスに向かう道に入り、最初の細い別れ道を左折してゴルフ・コースを右手に見ながら林道に入って行く道のことで、恐らくもうグーグル・マップの示す普通の道でも辿り着けるのだとは思いますが、道場に行く一番わかりやすい道はこちらだと思います。

その林道をずっと進んで左に入るのですが、上の写真が二つ目の看板で、この左側の道が整備されました。

ちなみに下の写真が元々の道で一つ目の看板がありますが、スルーして直進してください。

(注2)昨年一年間の出来事と今回オン・パレードだった驚きと感動について。

①昨年は片山画伯の古稀祝いの個展をご開催になられたり、以前ご紹介した熊本のオーディオメーカー バクーン・プロダクツの新製品発表会をされる等、イベントが盛り沢山だった模様。

バクーン・プロダクツは熊本震災復興支援としてこの道場とコラボして発売されたAMP-KUMAMOTOを始め、オーディオ・マニアの間では知らない人はいない有名ガレージ・メーカーで、オーディオ愛好家ご用達の雑誌stereo誌20年5月号のガレージ・メーカー特集でも取り上げられたばかり。

これらは、昨年発売されたプリとメインに分かれた小型セパレート・アンプや小型フォノ・イコライザーですが、オーディオ・マニアご用達の雑誌MJ(無線と実験)誌19年4月号で取り上げられ、好評価を受けていました。

実際に今回聴かせていただいたのですが、そのスピーカーが何とJBLの銘機パラゴン。

昨年の夏、ここに導入されたそうで、秋にはこのJBL初の3Way機にして初のステレオ対応という銘機のお披露目会をなさったとのことですが、何という皮肉。

私が昨年ここに来れなかった理由が、実はパラゴン。。。大分・竹田の音と珈琲 一粒万(イチリュウマンバイ)という新しく開業したお店で、福岡・古処さんから引き継いだこの気難しいお姫様のようなスピーカーと延々格闘していたから、なので。

ともあれ、今回パラゴンをこの小型アンプで聴かせていただいたのですが、この鳴らすのがとても難しいスピーカーがよく鳴ること!

以前聴かせていただいたAMP-KUMAMOTOもそうでしたが、バクーン・プロダクツのアンプの制動力の強さにはただ感心するばかり。

しかもこのアンプ、バクーン・プロダクツ製品の中では群を抜いて安いのに、この道場で買えば更なる値引きもしてもらえるとのこと。(期間限定とのことですので、詳しくは道場にお問い合わせ願います。)

アマゾンでの取り扱いもあるそうですが、本格的なセパレート・アンプの導入をお考えの方は一度ご検討いただいてもいいかも、です。

②そして、驚いたこと。この日いらっしゃっていたお二人の常連さんは、お若い感じはするものの、恐らくは70歳ぐらい?と思ったのですが、少しお話させていただいてビックリ!

何とお一方は88歳?!しかも、終活流行りでオーディオを早々と手放すことが多いこのご時勢において、未だにこの道場で新しい機器導入を考えておられるとか。その若い好奇心と行動力には頭が下がる思いがしました。

③更に驚かされたこと。。。タンノイ・コーネッタというスピーカーをご存知でしょうか?普通の方はご存知ないと思いますが、1967年頃アメリカで短期間だけ発売されていたという幻のスピーカー。

私はこのタンノイ読本で知ったのですが、1976年のステレオサウンド誌の読者投稿で認識され、そのチャーミングなタイトルで話題となったスピーカーの実物が何とここにあるのだとか。

エンクロージャー(箱)の中まで見せていただき、今はつないでないから、また今度ね!と片山さんにおっしゃっていただいたのですが、何だか聴きたいような聴きたくないような。。。幻の音との面会は、何とも微妙な気分です。

(注3)オーディオ・システムの凄みがここまで全てハマったのは初めて、と書きましたが、今回感動した残り2つのシステムについて。

まずはジャズ・コンボの再生で、このマイルス・コルトレーン用にという60年代のマッキントッシュとJBLの大型スピーカーを組み合わせたシステム。

このシステムで奏でられる演奏は、いわゆる浴びるようなジャズ。

ピアノ・トリオも決して悪くはないですが、その真骨頂を発揮するのは、トランペットやサックスといったホーン系の入ったコンボで、コルトレーンのクレッセントやデヴィッド・マレイのラバーズで飛んでくるサックスの気持ちのいいこと。

これもリアリティというは意味ではナマっぽくはありませんが、ジャズらしい、ジャズ・オーディオだからこそこんな風に聴きたいという片山さんの主張のこもったシステム。

クラシックの大オーケストラ再生のような意外性はありませんが、あの演奏の直後に聴かされると、その安定感のあるホーン・システムならではの心地好い響きに癒され、そのジャズに浸ってしてしまうことは間違いありません。

最後は、ジャズ・ヴォーカルとクラシックの室内楽再生で、その主役はこのJBLの垂れ幕の中にある部屋に置いてあるハーツ・フィールドを中心としたシステム。

最初はさっきとの違いが聴きたいとお願いして、コルトレーンのクレッセントを聴かせていただいたものの、音色の良さこそあれ、良く言えば素直、悪く言うと素っ気なさ過ぎてダメ。。。ところが、片山さんご推薦のヴォーカルとして、ダイアナ・クラールに変えた途端、その温かみのある表現ぶりにビックリ!

更にはシュタルケルのチェロ独奏に至っては、その音の美しいこと、艶っぽいこと!

このスピーカーはその箱=木の響きがポイントとのことで、50年以上の年齢を重ねた米松。そして、古い松で出来ているというこの部屋との調和で生まれたこの響き。。。これがあの大オーケストラで驚くべき響きを奏でた人のものなのか?あのジャズ・コンボの熱い音を鳴らした人のものなのか?

初めてこの道場を訪ね、片山さんの異才ぶりを目の当たりにした時の衝撃をまざまざと思い出した次第です。

あと正直なところ、この日は特別な一日だったのではないでしょうか?

オーディオは同じ状態で維持しているつもりでも、日によって全く再生が違うことがあります。しかも、片山さんはシステムをどんどん変えていかれるので、これだけのシステムが全てベストな状態であること自体、非日常的だったのでは?との思いがどうしても拭えません。

片山さんがどうおっしゃるかは不明ですが、きっとこの日の私はツイていたと思います。笑

【その他、この日お聞きした片山さんのオーディオ観】①クラシックの音は英国ブリティッシュ・サウンド、ジャズは古いJBL=同時代のマッキントッシュといった古き良きアメリカみたいな音が良く似合う ②再生の一番のポイントは、その音源が録音された時代のシステムで鳴らしてあげること ③ホーン・システムの音が好き。。。はい!同感です。

(注4)この日、片山さんがおっしゃった「オーディオ演奏家」ですが、これは私の敬愛する菅野沖彦先生がご提唱されておられたレコード演奏家と同じような違うような。

先生も録音された素材を自分なりに再生することとご定義されておられた点においては同じだと思いますが、この大オーケストラの表現を先生がお聴きになられたら、何とおっしゃったのだろう?密かにその妄想だけでも楽しめてしまいます。

【最後に】それにしても、本当にお腹いっぱいになった訪問でした。。。感謝。

今度は近い内に訪問するつもりですが、その時は熊本の誇る大芸術家 浜田知明さんについてもお話を伺いたいと思います。

【駐車場:有 喫煙:不明ですが、吸う場所ではないと思います。笑】

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汝が欲するがままをなせ

九州でのジャズ冒険を中心に興味の赴くままジャズ・クラシック等について不定期に掲載。 タイトルはM・エンデ「はてしない物語」の含蓄に富んだ言葉で、サイト主の座右の銘。 ♪新しい秩序、様式が生まれる時代の幕開けです。この混沌を積極的に楽しんでいきましょう。危ぶむなかれ、行けばわかるさ、です。笑